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2021/03/25
NPIメールマガジン 「ラテンアメリカから見る米中関係 ー米国の裏庭に延びる「一帯一路」―」

中曽根平和研究所の「米中関係研究会」(研究リーダー:川島真上席研究員、東京大学大学院綜合文化研究科教授)は「ラテンアメリカから見る米中関係」をテーマに、上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科 岸川毅教授のご報告をもとに議論を行いました。主なポイントは以下の通りです。

■ラテンアメリカから見る米中関係  ―米国の裏庭に延びる「一帯一路」―

・ラテンアメリカ諸国は圧倒的に米国の勢力圏内にあるが、その強い影響力への反発として、反米主義を生む風土もある。彼らは自身を「西洋文明の一員」と捉え、アジアをエキゾチックなものと見る傾向がある。
冷戦後は米国主導の新自由主義が支配的になったが、一向に国民生活が向上しない不満が蓄積し、各国で次々と左派政権が生まれた。そしてトランプ政権はラテンアメリカの反米感情を更に悪化させ、反米左派政権の台頭を招き、中国の進出に有利な条件を作り出した。

・中国にとってラテンアメリカは、経済的利益と政治的効果を狙う対象である。ラテンアメリカと中国間の貿易は飛躍的に増え、現在、ラテンアメリ側が貿易赤字である。ブラジルなど複数国では、米国を抜いて中国が最大の貿易国である。また、中国は親中的態度を醸成する金銭外交や広報・文化外交を展開している。中米・カリブ地域には台湾との国交を維持する国々が集中しているが、中国の圧倒的な経済力から、国交を台湾から中国に切り替える国も出ている。

・ラテンアメリカにとっての中国は、気前の良い経済パートナーであり新たな政治資源である。中国製品が大量に流入するラテンアメリカは、経済的に中国に従属することへの懸念はあるが、政治家が気前よく融資や援助を引き出せる国として魅力的だ。一方、国民感情的には、反米感情の裏返しで中国を受容している面があり、「中国的なるもの」への違和感・拒否感は存在する。中国は、距離感を保った実利的関係という性格が強い。

・胡錦濤政権も習近平政権も熱心にラテンアメリカ諸国を訪問し、「ラテンアメリカ政策文書」を発表している。21世紀海上シルクロードの「自然な延長」として「一帯一路」構想へのラテンアメリカ諸国の正式な編入が宣言され、複数の首脳が参加を表明した。「域間関係は制度化・格上げされて安定的局面に入った」と中国の学者は主張するが、バイデン政権の誕生で米国・ラテンアメリカ関係には一定の改善も見込まれる。これまでの関係を土台に、中国とラテンアメリカは今後関係をどう発展させるか、模索が続くだろう。

岸川先生の発表内容は、こちらのコメンタリーをご覧ください。
https://www.npi.or.jp/research/2021/03/25143840.html


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