研究の運営
本研究所は政策関連の研究に従事しています。ここには、政策の策定や決定の基礎になる分析と同時に、政策の効果、既存の政策の修正提案、そして新規の政策に関する提案などが含まれます。主として対象とする政策領域は、外交・安全保障、経済安全保障、経済・社会、+テクノロジー、そして憲政であり、外交から内政まで幅広く扱っています。
当研究所の研究員は、政治家、外交官、大学教員、官僚、経営者、政府系研究所あるいは民間企業の研究員など、多様な分野の経験者で構成されています。常時官庁・民間企業から出向者を迎えることを通じて、政策形成の現場の感覚も生かしながら、水準の高い研究成果をあげています。官庁・民間企業からの出向は、外務省、内閣府、防衛省、財務省、経産省、日本銀行、政策投資銀行、JETRO、JR東日本、日本製鉄等から迎えています。創設者・初代会長中曽根康弘の志である「国際社会が直面する重要課題について、自由な立場から深く考察し、創造的かつ建設的な提言を内外に広く発信する」に基づいて、組織をしばし離れ、自身が関心のある研究に取り組み、機関誌やホームページで論考を発表します。また、研究事業のマネジメントも行います。
本研究所の研究成果はシンポジウム、研究会、研究所が発行するNPI Quarterly、Asia Pacific Review、メールマガジン、ホームページでの掲載を始め、単行本の刊行など、国内外に向けて多彩な方法で発信されています。また、アメリカ、中国、台湾、韓国などのシンクタンクと相互訪問/開催によるセミナーを定例化しており、諸外国の研究者・政策実務者とつねに意見交換を行う充実したネットワークを持っています。
同時に若い世代の研究者もインターンその他の形で迎え、これからの時代を担う研究者の養成も重視しています。
令和2年度からは外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金(総合事業)分野B「安全保障」、および分野E「新領域(サイバー・宇宙・AI)をめぐる問題」を受け、これらのテーマに関する研究を精力的に進めています。
外交・安全保障
我が国の外交・安全保障政策を広範に研究しています。言うまでもなく日本の外交・安全保障、そして日米の同盟関係が研究の柱になりますが、中国や朝鮮半島の情勢も注視していますが、とくに近年の中国の動向については優先して分析しています。当然ながら米中関係あるいは国際秩序のあり方も重要な研究分野です。また、一般的な外交関係のみならず、近年は海洋安保、宇宙・サイバー等の個別の分野についても力を入れて分析しています。
経済安全保障
米中対立や新型コロナウィルスは、日本の企業活動を始めとする経済に重大な影響を与えており、経済安全保障の観点からも対策が必要です。特にデジタル経済化が進み、技術や知的資産の役割が重要になっていますので、従来のパラダイムでは対応できません。日本は技術力を中心とした産業競争力を回復するとともに、新しい国際ルールの形成に寄与する必要があります。自由貿易主義を維持しつつ、日本の経済安全保障を確保する政策を研究しています。
経済・社会
経済・社会グループでは、新型コロナウィルスが、日本の経済・社会に及ぼしつつある影響について研究を進めています。コロナウィルスの影響は、マクロ経済、都市・地域構造などなど多くの分野に及んでいますが、当グループとしては特に、長期的視点を重視し、ポストコロナの時代においても続くであろう経済社会の変容を見極めたいと考えています。その中で、地域政策、産業戦略、経済・社会政策のあり方についても建設的な方向を見出していくつもりです。
+テクノロジー
デジタルをはじめとした先進的技術の革新・拡がりが、経済・金融をはじめとした国際関係・国際安全保障に、どのようなインパクトをもたらすかを、可能性・リスクの両面から世界的視野で分析・考察したうえで、日本にとっての課題・対処、および世界に打ち出せる方向性を検討・提言していきます。産学官の専門家ネットワークを活かし、難解と思われがちな用語・概念を分かりやすく整理するとともに、技術の実装にあたって重要な「価値観」「心理」といったところにも配意していきます。
憲政
本研究所の創設者・初代会長中曽根康弘にとって憲法改正はライフワークであり続けました。本研究所としてもこれまで随時、憲法改正試案を含め、憲法問題についての研究報告や提言を世に問うてきました。今後とも、あるべき国家像の探求のような大きな課題から国会改革のような具体的な問題に至るまで、日本政治のあり方について巨視的な観点から研究・提言し続けていく所存です。
政策提言
シンクタンクの役割は、政策関連の事柄につき、分析することと同時に、具体的な政策提案を発表することにあります。日本では政策関連の情報・知識・専門能力は役所に集中するため、民間部門からの提言は質量とも見劣りする傾向があります。提言においては、現実の政治より数歩先を走ることが肝要であると考えています。発表された時点では時期尚早と批判されたとしても、たとえば10年-20年後にそれが採用されていれば、大きな貢献をしたことになります。このような気概をもって今後も政策提言に力を入れていきたいと考えています。