2015/06/29
第6回「東京-ソウル・フォーラム」~次の50年の日韓関係を見据えた共通のヴィジョン~をソウル市で開催しました。
世界平和研究所(IIPS)と韓国シンクタンクのソウル国際フォーラム(SFIA)は2015年6月19~20日、「第6回 東京-ソウル・フォーラム」をソウル市内で開催した。東京-ソウル・フォーラムは安全保障・外交、経済などの分野で、日韓の政・官・財・学の各界を代表する識者が意見交換を深める戦略対話の場として2010年より毎年開催されている国際会議である。
日韓基本条約調印50周年に当たる6月22日を前に開催された今回の「第6回 東京-ソウル・フォーラム」は、「次の50年の日韓関係を見据えた共通のヴィジョン」を総合テーマに、基調講演と4つのセッション、さらに両国のビジネスリーダーによる記念スピーチから構成される、2日間に及ぶインテンシブなプログラムが展開された。日本からは三村明夫IIPS副会長を団長とする16名の代表団が訪韓した。
開会式では、鄭求鉉(チョン・グヒョン)SFIA理事長から、韓国がMERSコロナウィルスへの対応で揺れる中、予定通りフォーラムの開催に至ったことに日本代表団への謝意が表された。佐藤謙IIPS理事長は、両国が、1965年以来積み重ねられてきた50年の重みを尊重して、一層の関係強化に尽力していくことの重要性を指摘した。
初日の第一セッション(モデレーター:韓昇洲(ハン・スンジュ)元外交通商大臣)では、日韓関係のアセスメントをテーマに朴喆熙(パク・チョルヒ)ソウル大学教授、西野純也慶應義塾大学准教授が報告を行い、この50年の両国関係は基本的には成功の歴史であった、との前向きな評価で一致した。
続く基調講演では、まず柳明桓(ユ・ミュンファン)元外交通商大臣が両国関係の発展には何よりも若者同士の交流が必要であることを強調した。次に別所浩郎在大韓民国日本国大使館特命全権大使が登壇し、大使としての在任中の経験を紹介しつつ、日韓が、信頼関係を作り上げるために様々な分野で努力し、実践していくことが重要だと述べた。
初日夜のレセプションでは、李洪九(イ・ホング)SFIA会長から歓迎の意が表され、三村IIPS副会長が答礼した。
翌日の各セッションはIIPS・SFIAが進めてきた共同研究プロジェクト(日韓共同提言)のテーマに即して構成され、共同提言の内容について活発な議論が展開された。日韓安全保障協力を扱った第二セッション(モデレーター:佐藤IIPS理事長)では、細谷雄一IIPS上席研究員が日韓安全保障協力の発展の歴史と課題を紹介し、また金聖翰(キム・スンハン)高麗大学教授は朝鮮半島情勢、対中国関係、対米関係など両国に共通する諸問題を総括した。
続いて、両国のビジネスリーダーによる記念スピーチが行われた。まず佐々木幹夫日韓経済協会会長が経済・人・文化という三本の柱で日韓の交流拡大を進めてきた日韓経済協会の歩みを紹介し、これらの交流が両国関係をさらに高いレベルに引き上げることを強く信じ、取り組んでいくと述べた。次に柳津(リュウ・ジン)豊山グループ会長・CEOは、日本の協力なしには韓国の基幹産業の発展はなかったと述べ、両国の経済分野での強い結びつきの歴史を振り返った。
第三セッション(モデレーター:鄭SFIA理事長)は日韓経済協力をテーマに共同提言に即して、高安雄一大東文化大学教授が民間事業部門における協力、安徳根(アン・ドゥックン)ソウル大学教授が経済連携における協力について、それぞれのあるべき方向性について報告した。
第四セッション(モデレーター:荒井寿光IIPS副理事長)では、①人道的問題、②気候変動問題、③高齢化社会、という3つの全地球的課題における協力の可能性について議論された。①では、李信和(イ・シンファ)高麗大学教授が、自然災害や人道的危機の状況に対して両国が果たすべき役割を論じた。②では、李會晟(イ・フェソン)気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 副議長が、エネルギー政策と気候変動対策の融合という、両国が直面する課題についてコメントした。③では井出智明IIPS主任研究員が、高齢化社会において日韓が世界の高齢化トップランナーであることを指摘し、今後の両国の施策に世界が注目していると述べた。
最後に両理事長が議論を総括し、佐藤IIPS理事長が今回のフォーラムが節目の年にふさわしい密度の濃い内容であったと評価し、次の50年の新しい日韓関係に向けて今後も本フォーラムが果たすべき役割が大きいと述べた。鄭SFIA理事長は、共同研究で明らかになった課題に、実際の行動と対話をもって取り組んでいく必要があると指摘した。