2017/12/06
第16回「日台対話2017」を東京で開催しました。
日台対話2017は、当世界平和研究所(IIPS)と遠景基金会の共催により、11月22日に東京で開催された。本対話は、2002年以来日本・台湾の有識者が毎年交互に訪問し、アジアの政治・経済・安全保障等について自由かつ広範に議論するもので、今回で16回目を迎えた。今次会合では、日本からは佐藤謙・IIPS理事長、荒井寿光・IIPS副理事長、藤崎一郎・IIPS副理事長等が参加し、台湾からは陳唐山・遠景基金会董事長、林正義・行政院大陸委員会副主任委員等の参加を得た。また、会議前日の21日には、台湾からの訪問団による中曽根会長への表敬訪問が行われた。
本会合の総合テーマは「東アジア情勢と日台中関係の展望」として、日台双方の政治・経済情勢の変化、トランプ政権の発足や中国共産党の第19回全国代表大会等の動きを踏まえて、「中国大陸情勢と日台関係」、「東アジアの安全保障情勢」及び「東アジア経済の現状と展望」の3つのセッションを設定した。
第1セッションでは、「中国大陸情勢と日台関係」をテーマに、藤崎一郎・IIPS副理事長を議長として、黄信豪・台湾師範大学市民教育とリーダシップ学科教授と川島真・IIPS上席研究員からの報告に引き続き、ディスカッションを実施した。中国共産党の第19回全国代表大会において、主要矛盾の転換が宣言されるとともに習近平一強体制が強化されたものの、集団指導体制や定年制の維持、バランスに配慮した人事等制度の枠組み自体は変わっていないとの見方が日台双方の参加者間で共有された上で、今後の日台関係をはじめ、地域への影響について活発な意見交換が実施された。
第2セッションでは、「東アジアの安全保障情勢」をテーマに、林正義・行政院大陸委員会副主任委員を議長として、徳地秀士・IIPS研究顧問と李明峻・台湾北東アジア学会秘書長からの報告に引き続き、ディスカッションを実施した。東アジアの情勢が複雑化している中で、日台両国は地政学的に重要な位置を占めていることを改めて認識した上で、地域の安全保障の面で米国との関係は極めて重要であり、二国間関係やさらには日米豪印といった幅広い協力関係の進展にも留意が必要であること、また非伝統的な脅威も高まりを見せる中で、サイバーセキュリティー等の分野において日台間の協力を進めていくことができないかといったこと等の指摘があった。
第3セッションでは、「東アジア経済の現状と展望」をテーマに、荒井寿光・IIPS副理事長を議長として、邱達生・アジア太平洋経済協力会議中華民国委員会秘書長と川上桃子・アジア経済研究所地域研究センター次長からの報告に引き続き、ディスカッションを実施した。台湾経済は回復基調にあるものの、国内需要の伸び悩みから力強さには欠ける状況であることや、国際的なサプライチェーンのフラグメンテーションの進展と頭脳循環の構図の変化という2つの潮流の中で台湾にとっての強みを生かす産業政策を形成していくことの必要性が指摘された。これらを踏まえて、台湾の5大イノベーション産業計画及び新南向政策について意見交換が行われるとともに、経済面では日台双方に共通する課題もあるとの見方が共有された。また、日本が主導的役割を果たしているTPP交渉等を通じた国際貿易・投資のルール作りに対する期待も示された。
最最後に、地域の安全と繁栄のためには、自由と民主主義という価値観を共有し、理解し信頼できる間柄にある日台の協力と良好な関係をより深めていくことが必要であり、本会合のようなトラック2対話が重要であるという点で一致して、今次対話を終了した。