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2018/11/20
「知りたいことを聞く」シリーズ No.2 「米中間選挙の評価と今後の日米関係」(久保文明研究本部長)

中曽根平和研究所では、「知りたいことを聞く」シリーズ第二弾として、「米中間選挙の評価と今後の日米関係」と題して、会員と久保文明研究本部長(東大教授)及び藤崎一郎理事長(元駐米大使)との意見交換を開催しました。議論の概要は下記3のとおりですが、オフレコを前提としていますので、これ以上の詳細は割愛いたします。

 この会合は従来型の講演会ではなく、はじめ久保本部長と藤崎理事長から下記の3つの論点について簡単に述べた後、会員出席者から質問する形で進行しました。第三回は12月21日に金杉憲治外務省アジア大洋州局長による「最近の北東アジア情勢」を予定しています。

1 日時:平成30年11月19日(月) 15:00-16:30

2 場所:中曽根平和研究所 大会議室

3 概要

(1)中間選挙の評価

 今回の中間選挙には、歴史的に見て異例な部分と従来通りの部分があった。異例なのは高い投票率で、トランプ政権に反発を強めた民主党支持者の高い投票意欲は予想されていたが、「キャラバン」と呼ばれる大規模な中米移民の接近や、カバノー最高裁判事の任命をめぐる激しい党派対立から、危機感を募らせた共和党支持者の側でも動員が進んだと考えられる。従来通りの現象は、下院で与党が敗北したことであるが、与党が中間選挙で議席を増やした例は20世紀以降3度しかない。なお、上院では共和党が多数派を維持したが、これは改選議席が少ないことと、6年前の選挙で民主党が勝ちすぎたことが原因である。中間選挙の結果を総括すれば、トランプも反トランプも強く、キーワードは「痛み分け」であろう。世間はレッテル貼りが好きなので2016年大統領選の結果ラストベルトが宣伝されたが、今回はブルーウェーブだった。しかし結局アメリカは長期間、一方の方向に偏ることはないと示せたことが最も重要である。

(2)今後のトランプ政権

 アメリカでは議会の権限が大きく、内政面での影響は避けられない。トランプ政権が進めていた軍事費の大幅な増額は困難になるだろうし、下院議長が民主党になることで公聴会においてスキャンダルが追及されることも予想される。ポイントは弾劾のプロセスが始まるか否かである。モラー特別検察官が解任されれば、民主党左派から弾劾を求める声が強まるだろう。弾劾に至らないとしても、民主党はトランプ大統領に実績を作らせないために、政権に仕事をさせないことを目指すと考えられる。そもそもホワイトハウスと上下両院を全て共和党が支配していたこれまでの2年間(これは戦後アイゼンハワー、ブッシュ息子だけ経験した稀有な事例)でさえ、オバマケアの撤廃やメキシコ国境の壁建設など、果たされなかった公約もある。下院で多数派を失ってますます内政運営が難しくなる中で、トランプ大統領は外交で実績づくりしようとし貿易等で一層対外的な圧力を強める方向に動く可能性が高い。なお、対中政策などには評価できる面があることも忘れてはならない。経済、外交、安全保障政策の大枠は変わらないだろう。トランプ大統領の周囲には、彼の機嫌を損ねないようにしつつなんとか大統領の衝動的な動きを緩和しようとしている人々も存在するが、成功していない場合も相当あるのではないか。

(3)2020年大統領選挙

 今回の中間選挙で民主党が下院を掌握したことが、そのまま2020年の大統領選挙での勝利につながるわけではないのは当然だ。民主党の中にトランプ大統領に対抗する有力な候補が見いだせないとよく言われる。これは未だにサンダースやバイデンなどのベテラン議員の名前が取り沙汰されるからだ。しかし、カーターやクリントン、オバマなど歴代の民主党大統領も、当初は無名の州知事、上院議員に過ぎず、大統領選挙を前に彗星のごとく現れたので過早な議論には気をつけた方がいい。民主党候補が①過度に左派ではなく、②若く、③東部や西海岸でなく中西部や南部の出身だとトランプ大統領もなかなか厳しいかもしれない。さらにマイノリティ出身でないとますますやりにくいかもしれない。

日本にとっては米国が、TPPやイラン核合意へ復帰し、同盟国を尊重し、中国に一定の警戒心を持ってもらうことが望ましい。現状では民主党でも左派を中心として、保護主義的あるいは孤立主義的な傾向が強まっているように見えるが、アメリカの振り子は常に振れて来たことを忘れてはならない。

以上

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