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イベント

2026/02/06
1月26日にNPI公開ウェビナー「2年目を迎えた第2次トランプ政権とインド太平洋地域ー評価と展望」を開催しました。

 1月26日、中曽根平和研究所の日米同盟研究会は「2年目を迎えた第2次トランプ政権とインド太平洋地域ー評価と展望」とのテーマでウェビナーを開催し、世界各地で日々目まぐるしく情勢が変動する中、第2次トランプ政権の政策はインド太平洋地域にどのような影響を与えてきたかについてさまざまな角度から分析し議論しました。


【パネリスト】

渡辺 紫乃(上智大学教授/当研究所客員研究員)

桒原 響子(日本国際問題研究所研究員/当研究所客員研究員)

高橋 和宏(法政大学教授/当研究所客員研究員)

古賀  慶(シンガポール南洋理工大学准教授/当研究所客員研究員)

寺岡亜由美(ブランダイス大学助教授/当研究所協力研究員)

石田 智範(防衛省防衛研究所主任研究官/当研究所協力研究員)

加藤 智裕(当研究所支援研究員)


【モデレーター】

森   聡(慶應義塾大学教授/当研究所上席研究員)


【議論の概要】

 冒頭モデレーターより、対米不信を強める欧州が対中接近を進める可能性、4月に予定されているトランプ大統領の訪中が大型商談の成立などを通じて「G2」の空気を醸成する可能性、そしてロシア・ウクライナ戦争が続行する中でロシアの対中依存が進む可能性が指摘され、米欧露がそれぞれ中国に接近する流れが生まれれば、中国が周辺国等への威圧を強めるリスクが高まりかねず、こうした背景を念頭に、アメリカによるインド太平洋地域への関与や日本への影響についても議論したいとの発言がありました。


まずトランプ政権によるインド太平洋地域への関与について、登壇者から以下の点が指摘されました。


・昨年4月2日の相互関税の発表はニクソンショックに近い歴史的な出来事で、国際経済秩序が大きく揺らいでいる。トランプ政権はWTOからは脱退せず最恵国待遇の原則の見直し、安全保障例外の見直しなどの改革案を提出しており、国際経済体制は崩壊したというよりも現状に則した形に変容しつつあるとみるべき。ただ、自由貿易は米国の国益にそぐわないという見方は超党派のものになっている。


・米中関係については双方とも悪化させる余裕はなく首脳会談は実現するであろうが、中国側が期待する成果として「G2」のアピールや台湾への言質を取ることなどが挙げられる。また経済での大型商談が南シナ海や台湾などの問題を薄くしないかとの懸念もある。


・米台関係については、11月頃から上向きで、その背景には、頼政権による国防費増額決定や、史上最大の武器売却、そして、1月に入っての米台関税合意がある。ただし国防費増額の議会承認が得られるか、台湾内で米への猜疑心高まる中で、4月の訪中を乗り越えどう安心を与えられるかが課題。国家防衛戦略に台湾が記述されなかったのも中国による台湾国内での世論戦に影響を与える。


・米韓関係については、日本と同様に李在明政権も巨額の対米投資を約束し、また防衛予算を対GDP比3.5%に段階的に増額することを約束するなど、対米協調姿勢を前面に打ち出している。トランプ政権は国家防衛戦略において、自助努力を惜しまない「模範的な同盟国」との関係を重視し、優遇する方針を示したが、韓国はそうした同盟国の一つであるといえる。国家防衛戦略では、対北抑止の主力を韓国軍が担うべきこと、米韓同盟は米国の関心を踏まえて対中抑止の観点からも意義付けられるべきことが示された。台湾有事を念頭に置いた在韓米軍の戦略的柔軟性の問題が、今後も米韓関係の重要な争点である。


・東南アジア諸国から見ると、米国は、多国間外交から遠ざかり、中小国には関心無く、関税は交渉次第でASEANの結束を弱体化させる方向に作用している。


・米印関係については直近の改善は難しいが、米国から見て印の重要性は失われていない。関税交渉は停滞している。パキスタンと米国の接近が一つの注目変数である。


・アメリカの偽情報対策は大転換し、関連の政府機関や専門チームが解体され、SNS企業や専門家コミュニティは関連の取組みや研究活動の大幅縮小に追い込まれるなど、対策のエコシステム機能が停止した。国際的にもアメリカの関与が不在になったことで諸外国の活動に影響が出ており、偽情報や情報操作に対する相対的な抑止力が低下する可能性がある。これはロシア等にとり都合のよい状態。


また登壇者より、各種の地域情勢がもたらす日本へのインプリケーションとして以下が指摘されました。


・高関税がアメリカ市場のニューノーマルであると覚悟せざるを得ない。


・4月のトランプ訪中前に高市首相は訪米すべきであるが、その場合、トランプ大統領に刺さるナラティブと短期的に目に見える成果が必要。


・台湾海峡の平和と安定が重要で、米国に取りそれを失うのは損であるということを説得する必要がある。いわゆる「台湾有事」にかかる答弁は撤回せずに乗り切ることが台湾にとり励みにある。台湾の国際社会でのプレゼンス上昇に日本が主導権を取る必要が出てくる。


・バイデン政権と比べれば、日米韓3か国の安全保障協力について、トランプ政権の関心は相当に希薄である。ただし、日米韓3か国協力の意義を否定するまでには至っておらず、米国が主導せずとも枠組みが機能するのであれば、それに付き合う用意はあるだろう。日韓の立場からすれば、不確実なトランプ時代においてインド太平洋地域への米国のコミットメントを確保する観点からも、日米韓協力の枠組みの有用性はむしろ高まっている。米国をインド太平洋地域に一層深く引き込むためにも、日韓が3か国協力を主導すべき時代が到来している。


・法の支配に基づく国際秩序を訴えるFOIPはトランプ政権にはそぐわないものとなっているが、それでも経済安全保障の分野での実利的な協力を追求すべき。


・インドは多角化を加速しているが、茂木外相が訪印しAIと経済安全保障で対話枠組みを作ったところ、防衛装備品も含め実質的な成功例を積み上げていくかが課題。また、日豪でQUADを下支えできないか。


・日本では偽情報拡散を含む情報戦対策強化が進んでいる。この分野での日米公式の連携枠組みは消失したが、アメリカがすべての関連対策から手を引いたわけではない。日本には、トランプ政権が対処対象と位置付ける分野(「プロパガンダ対処」など)を見極め、能動的にアメリカに働きかけ国際連携に引き入れていく努力が求められる。


最後にモデレーターより、国際政治における米国の役割が「定数」から「変数」になっている、米国の国家安全保障戦略や国家防衛戦略を分析し、日本の国益と米国の行動にギャップがあるのならば同志国連携などをやっていく必要もある、ただしインド太平洋は米国にとって重要な地域であるので、日本の立ち位置を欧州とのパラレルで考える必要はなく、また個別の課題ごとに米国と折り合いをつけていく必要がある、との総括コメントがありました。

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