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経済・社会

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2019/03/04
「日本そして世界の人口動態がもたらす政治経済社会的課題-その解決に向けてー」 (森田朗 津田塾大学総合政策学部 教授)

 中曽根平和研究所では、「日本そして世界の人口動態がもたらす政治経済社会的課題-その解決に向けてー」と題して、森田朗津田塾大学教授(前・国立社会保障・人口問題研究所所長)と、会員・研究所員との意見交換を、下記の通りにて開催しました。議論の概要は下記3のとおりですが、オフレコを前提としていますので、これ以上の詳細は割愛いたします。

 この会合は従来型の講演会ではなく、最初の1/3を基調講演、その後2/3を会員はじめとした出席者との質疑応答、という、意見交換重視型のものです。今後も継続して開催する予定です。

1 日時:平成31年2月14日(木) 15:00-17:00

2 場所:中曽根平和研究所 大会議室

3 概要

(1)少子高齢化の現実と人口減少のメカニズム

 日本の人口は減少局面に入った。2100年には、現在の中位予測では6,000万人程度まで減少し、もし出生率が2.0近辺まで回復したとしても1億人程度にとどまる。

 現在は地方の縮退が目立つが、2020年代には都市圏含めた全国的な縮退が目に見えるようになろう。なかでも最も影響が大きいとみられる秋田県では、2040年に、人口が2/32010年比)となり、老年人口割合は4割を超えるとみられる。

 人口減少そのものは、日本のみならず、世界各国に共通するメカニズムといってよい。出産した子供が生き延びる確率の高まりと反比例して、出生率は下がり、そのことで母親になりうる世代人口も確実に減少していく。

(2)世界の人口のトレンド

 世界の人口はいずれ頭打ちになることが見えてきた。開発途上国においても、感染症の克服等を通じて平均寿命は着実に伸びている一方、人口増加率は減少傾向である。

 2050年の世界人口は90億人程度になるとみられる。しかし日本はそのわずか1%に過ぎなくなり、日本の産業は海外へ活路を見出すしかなくなる。特に、今後も人口増加が見込まれ、2050年には合計で世界人口の4割以上を占める見込みである、インド市場+アフリカ市場への取り組みが、日本経済に大きな影響を与えよう。

 また中国の人口減少・高齢化は、2020年代後半から顕在化してくる。母数が多いが故に、周辺諸国に与える人口減のマグニチュードを軽視してはならない。なお、アジア諸国は押しなべて急激な高齢化と人口減少がやってくるため、各国共に対応は急を要する。

(3)人口減少がもたらす政治経済社会的課題

【労働力人口の減少 → 生産性向上のためのシステム改革】

 日本の労働力人口の減少は年間で数十万人規模に達する。移民では賄いきれず(アジア諸国にも労働力人口減が遅れてやってくる)、シニア層や子育ての主婦への就労機会を増やしてもカバーは困難な規模である。

 総務省が2018年に発表した「自治体戦略2040構想研究会」報告の「Ⅲ 2040年ごろにかけて迫りくる我が国の内政上の危機とその対応」の各小見出しは、今後の危機を象徴的に表したものといえよう:「1 若者を吸収しながら置いていく東京圏と支え手を失う地方圏」「2 標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全」「3 スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ」

 右肩上がりの成長の幻想は、捨てねばならない。日本経済全体の成長率よりも、人口1人当たりのGDPをどう維持し向上していくか、を主たる経済政策として考えるべき。従って、限られた人口やリソース、ICT等を最大限効率的に活用できるべく、各種政治経済社会システムの改革を通じた、生産性向上政策が不可避となる。(システム改革なきまま、就労時間を減らすだけでは、生産性の低下にしかつながらない)また個性を重視した教育など、一人一人の生産性を伸ばすための下地作りも重要な政策となる。 

【財政・社会保障制度・公共インフラの耐久性、ならびに政治の役割】

 人口減少と高齢化が、比較的短期間にダブルパンチで生じることで、自治体経営にも税収減・財政負担で大きな影響を及ぼすことが想定される。非大都市圏においては、人口規模の小さい市町村ほど、人口減少率が高まる。また、大都市近郊のベッドタウンでは急激な高齢化が進む。共に、自治体としての機能維持を大きく問われる事象。

 現在の社会保障制度は1961年に定められたが、当時は65歳以上の老年人口比率が5%程度であった。しかし現在では25%を超えており、ピーク時の2065年には40%近くとなる。従って、現状通りの維持は容易でない。もはや「低負担・高福祉」では回らない。

 こうしたなか、道路や病院など、各種公共インフラをどう集約させていくかも大切。インフラ維持コストの側面、また人口減少による土地本位制資本主義の緩やかな崩壊の側面、これらは特に地方経済の維持にあたって、重要な検討要素となろう。

 更に安全保障上の重点も変わってくるだろう。特に隣国ロシアの人口減少と高齢化は、広大な国土を守るための軍事力確保の困難さを増す要因となる。我が国においても、陸海空の戦力バランスの再考が迫られることになるかもしれない。

 こうしたなか、「若者vsシニア」「都市 vs 地方」「Rich vs Poor」といった政治的な対立軸はより顕在化してくるだろう。日本の政治に強く期待される役割は、「右肩上がりの成長への幻想と訣別する中で、どこを上手にたたんで、どこを維持していくか」という「説得」の機能に他ならない。

以上

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