2020/05/26
高橋主任研究員の研究レポート「新型コロナウイルス政策における証拠に基づく政策決定(EBPM):日本の政府・自治体の主要政策指標は正しい政策判断に資するのか」を掲載しました。
高橋主任研究員の研究レポート「新型コロナウイルス政策における証拠に基づく政策決定(EBPM):日本の政府・自治体の主要政策指標は正しい政策判断に資するのか」を掲載しました。
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(注)本稿は2020年5月25日時点の情報に基づく。
(要 旨)
日本の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大において、これまで政府、自治体ともに様々な政策判断のための指標(KPI)を提示してきた。しかし、正しい政策判断には正しい指標の採用が不可欠である。日本では政策目的に適した指標が選ばれているのだろうか。本稿では日本と海外のKPIを比較し、類似点と相違点を確認するとともに、KPIのうち、人との接触データ、新規陽性患者数、陽性率を中心に課題を検討した。
その結果、日本では政府、自治体は感染拡大状況、医療への負荷の2つの柱で指標を構成していることに特徴があった。ただし、出口戦略の中で合わせて次に来る感染爆発期に備えて検査体制の拡充などの基準をクリアしているかを含めているところは少なかった。一方、海外では多くの国が第2波の感染爆発に備えて病床や検査の処理能力を伸ばしておこうとして数値を掲げていた。指標については日本では感染経路不明の新規患者数(または率)、陽性率が重視されているが、海外では市中感染蔓延の兆候と捉えてむしろクラスターが複数発生する状況を指標に含めていた。また、スペインはOD(Origin and Destination:起点・終点)などの人流データや経済社会データなど特徴的な指標を含めていた。さらに感染拡大の状況把握や第2波などへの準備状況は日本の都道府県よりも狭い下位の市・郡別または県・大都市別といった地域区分でモニタリングをしているところが多かった。
それらの分析を踏まえて、以下を提言した。
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今回の感染拡大において特別警戒地域となった都道府県でも町村分を中心に陽性患者ゼロのところが多数あった。第2波以降の政策対応において都道府県全域での把握では広すぎる。海外と同様に日本でも保健所管轄管内別などで感染拡大状況、検査体制の充実度などのモニタリングに力を入れるべき。
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景気指標では先行系列・一致系列・遅行系列がある。感染症対策においてもいち早く感染拡大を察知する先行系列か否かで整理し、足りない指標を追加することが求められる。日本で最も重視されている新規陽性患者数は感染から発表までタイムラグが大きい現状では遅行系列にすぎない。陽性率も検査体制のキャパシティに影響を受ける指標である。発熱などの先行系列の指標整備に注力すべき。
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第2波以降では社会・経済指標も含めて自粛要請のマイナス面を捉えることも必要。特に、社会面ではCOVID-19で逆にストレスを抱える者、他の疾患・自殺で亡くなる者、経済面では労働相談窓口への相談した失業のリスクが高くなっている者、解雇通告された者、倒産件数などを地域別で把握すべき。
キーワード:新型コロナウイルス感染症、主要政策指標、新規陽性患者数、陽性率
以上