2025/01/24
中国・台湾研究会コメンタリーNo.4「中国における「軍事の智能化」の現段階」(八塚正晃・防衛省防衛研究所 主任研究官)を掲載しました。
人工知能(AI)の軍事利用が将来の安全保障環境に及ぼす影響が注目される中で、AIに関する編集研究・科学技術水準において既に大国となっている中国の動向はその帰趨を左右する存在である。習近平政権の中国人民解放軍は、AIを中心とした先端技術の軍事利用による軍事力の強化について、「軍事の智能化」と呼称して先駆的に進めている。だが、中国人民解放軍が実際にどのように「軍事の智能化」を進めているか、より具体的には、いかなる方面でAIの軍事利用を進めているかについて、依然として不透明な部分が多い。この不透明性は、一党支配という政治体制や秘密主義的な軍の体質にも起因するが、そもそもAIなどは汎用性の高い軍民両用の技術であるためAIの軍事利用が曖昧であることにも求められる。本稿は、実態把握が難しい中国の軍事の智能化の実態について、多角的な観点から照射することによって、部分的にでも実態に対する理解を深め、展望を得ようとするものである。具体的には以下で①軍事の智能化に関する中国指導者の認識、②軍(及び軍需関係企業)によるAIに関する契約、③AIに関する科学技術と人材、④軍事の智能化に係る軍改革の4つの視角から中国の軍事の智能化の現段階の評価を試みたい。