2025/01/27
多国間関係研究会コメンタリーNo.4「いわゆるグレーゾーン事態への対処について 国際法の観点から」(鶴田 順・明治学院大学)を掲載しました。
2022年12 月、日本政府は新しい国家安全保障戦略を策定した。日本をとりまく安全保障環境の厳しさが増すなかで、新しい戦略の策定はきわめて重要である。とりわけ懸念されるのが沖縄県の尖閣諸島に対する中国の挑戦である。ここ数年、中国海警局所属船舶(中国海警船)による尖閣諸島周辺の領海への侵入、接続水域に
おける航行、日本漁船への接近・追尾は常態化している。中国は尖閣諸島の領有権を主張するだけでなく、尖閣諸島周辺海域での動きを活発化させている。 日本は尖閣諸島周辺の日本領海への中国海警船の侵入を規制し、領海に侵入された場合には、中国国内法令に基づきパトロールを行っていると主張する中国海警船に対して領海外への退去を求めるという対応をとっている。日本の領海における中国海警船の活動は、国際海洋法の観点からは海洋法条約19条2項(l)に基づき「無害でない」と評価することができ、ひろく国際法の観点からは日本が有している領海主権の侵害であり、国際法違反と評価することができる。日本はこれらの法的評価をふまえて現場海域で中国海警船に対応している。今後、中国海警の隊員が尖閣諸島へ上陸する可能性もある。日本漁船に対する中国の漁業関係法令の執行(日本漁船の立入検査や拿捕等)がなされる可能性もある。いかなる事態が発生したとしても、日本が適切かつ実効的に対処できるように備えを進める必要がある。