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2002/07/04
ダニエル・ボブ氏(元米国上院議員秘書)講演会 「米国議会から見た日本と中国」

於:キャピトル東急ホテル

 当研究所は、7月4日、ダニエル・ボブ元米国上院議員秘書による「米国議会から見た日本と中国」と題する講演会を開催した(日本財団との共催)。

 講演でボブ氏は、米国議会では近年、対日関心が低下してきているが、これとは対照的に、中国への関心は非常に高まっている点について述べた。

ブッシュ(父)政権時代には、米国の対日貿易赤字はピークであり、日本は経済的脅威と位置付けられた。当時は、天安門事件を除いて米国議会の中国に対する関心は皆無であった。しかし、クリントン政権の1990年代半ばになると米国の対中貿易赤字は拡大し、中長期的には中国は経済面で米国の脅威になることが確実視されるようになった。更に、1996年の台湾危機以降、安全保障の面でも中国は米国の脅威たり得ることが確信されるようになった。日本は米国にとって経済的脅威とされたことはあっても、安全保障に関して脅威とはなり得ない。

 米国議会は対中貿易交渉において、人権侵害、強制的人工中絶、宗教問題、武器拡散、チベット問題、スパイ問題、不正な技術移転問題、政治献金問題等も含め問題提起するようになった。こうした問題には多くの議員が関心を持ち、時には党派を超えて連合体が結成されて政府に対中政策の変更を求める動きも生じた。他方、対日関係では、保険、通信分野等で摩擦が存在したものの、対中問題のような緊迫した問題は皆無であった。

 また、ワシントンにおいて影響力を持とうとする中国と台湾の間における競争が激化したことも、米国議会議員の中国に対する関心を高めることとなった。1997年の香港の中国返還に際して、中国も台湾も多数の米国議会議員やスタッフを招聘しPRに努めた。この結果、米国議会議員の約半数が中国訪問の機会を得た。これに対して、米国議会議員が日本を訪問する機会は格段に少ない。他に、ベオグラードでの米軍による中国大使館誤爆事件、北京での法輪功弾圧等も、米国議会議員の対中関心を喚起した。

 1997年のアジア経済通貨危機に際して米国議会は日本経済回復が不可欠と考え対日関心がやや高まったが、東アジア諸国は自力で危機を克服したことから、日本の経済的重要性についても失望感が高まった。この間米国経済は高成長を遂げ、日本は最早、米国経済の挑戦者ではなく、日本経済の弱体化が米国経済の足かせになるとの懸念が広がった。

 当初、中国に対して強硬姿勢を見せた現ブッシュ政権下でも9.11テロ後は対中関心は相対的に低下したが、インド-パキスタンの緊張緩和への中国の協力、テロリストに関する米中間の情報交換等について、米国議会は歓迎の意向を示している。中国のめざましい経済的発展が米国に及ぼす影響、WTO加盟後の動向等、米国議会の対中関心は依然として高い。

 こうした状況下で、日本は国内経済再生に取組むことが最も重要であり、米国議会もそれを期待しているとボブ氏は締めくくった。 (山本)

※この講演会は日本財団の助成事業により行っております。

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