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2003/04/22
平和研講演会シリーズ2003 "国際社会の新たな課題とわが国の役割" 「最近の日露関係」

於:キャピトル東急ホテル

世界平和研究所は日本財団の助成を受け、4月22日、キャピトル東急ホテルにてアレクサンドル・ニコライビッチ・パノフ駐日ロシア特命全権大使による講演会「最近の日露関係」を開催した。

講演でパノフ大使は、日露関係は7年前の大使就任時に比べ大きく前進し、現在は良好な関係を築いていると述べた。また、今後の展望としては経済分野の関係改善がキーポイントであり、領土問題についても同関係改善を含む新しい関係の構築をベースに、政治的決断によって解決しなければならないとの認識を示した。

● 良好な日露関係

中東和平は、紆余曲折を経てきたが、1993年のオスロ合意、95年のオスロ2合意、98年のワイリバー合意と進展を続け、しっかりとした和平の枠組みを持っており、中東和平になんら追加的枠組みを持ち込む必要はなく、基本的にこの枠組みを堅持すればよいと考えられる。

日露両国は7年前の大使就任時には双方の関心が低く、紋切り型の認識が強く残っていたが、ロシアも日本と同じ民主主義、市場経済、G8メンバーの国との認識が日本の政府、政治家等にも浸透した結果、小泉首相が1月の小泉-プーチン会談で日露両国の共通点に言及する等、基本認識を共有する関係となっている。このような認識の存在が非常に大事であり、これらをベースに新しい関係を築いていけば、いずれ領土問題も解決できると考える。実際、防衛面でも日露間に脅威は存在せず、両国の防衛トップ交流も盛んに行われている。領土問題を除いて対立、矛盾は存在しないばかりか、むしろ多くの国際問題で両国は一致している。文化面においても、ロシアでは和食や歌舞伎、映画等の日本文化ブームである等、近づきつつある。

● 今後の課題は経済関係

基本認識の一致により両国関係が好転する一方で、大変残念なことは経済分野での前進が無い点である。貿易、投資共に伸びておらず、率直にいって理由がわからない。領土問題が原因との考えもあるが、領土問題の存在を否定していたソ連時代に日ソ間ビジネスが活発だったことを考えると、そうとも考えにくい。外国にとってロシアのビジネス環境が魅力的でない点もあるとは思うが、それでも独、仏、英、イタリア等のビジネスは日本よりも活発である。ロシアでのビジネス失敗例が過剰に問題視されることにも違和感を感じる。極東地域での日本からのビジネスに期待して毎年多くのビジネスミッションを受入れたが、何も結果が出ないことに失望している。経済関係の発展がなければ両国に良い意味でのロビーも育たず、日露平和条約締結も不可能となることは明らかだ。このような状況がパイプライン建設プロジェクトを契機に少しでも改善されることを期待し、全力を尽くしている。

政治的決断で領土問題解決は可能 最も難しい問題は領土問題だが、この問題は政治的決断で解決が可能だ。ただし、そのためには軍事面を除く準同盟関係のような新しい関係や平和条約締結の必要性をロシア世論が感じる等、特別な雰囲気の醸成が必要だ。また、一気に解決できる問題ではないので、プーチン大統領が56年の日ソ共同宣言を初めて正式に認めたように両国の妥協が必要だ。

最後にパノフ大使は、領土問題は簡単に解決はできないが、1月の小泉―プーチン会談でも領土問題解決で一致したように、両国の関係を通じて必ず解決しなければならないと総括し、講演を締めくくった。
(西本)

※この講演会は日本財団の助成事業により行っております。

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