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2003/07/22
平和研講演会シリーズ2003 "国際社会の新たな課題とわが国の役割" 「フランスの外交政策-ヨーロッパ及び日仏関係」

於:キャピトル東急ホテル

世界平和研究所は、日本財団の助成を受け、7月22日、キャピトル東急ホテルにてベルナール・ド・モンフェラン駐日フランス大使の「フランスの外交政策-ヨーロッパ及び日仏関係」に関する講演を開催した。

講演の冒頭、大使は欧州連合をめぐるフランス外交の現状について触れ、ここ数年フランスは欧州連合の拡大を中心にその外交活動を活発化させてきたと指摘した。また、その背景には、従来とは異なる世界環境、開放性の高い世界の出現、多くの諸国の意志、決定への参画によって多大な成果がもたらされてきたことなどの重要要因があると述べ、さらに以下のように続けた。

フランス外交の目的が自国利害の防衛にあることは間違いないが、それは単に物質的なものだけでなく道徳的理念の防衛も目指すものであり、かつ原則を重要視するものである。また、フランスは欧州統合に外交重点を置いてきたが、この重要課題の意味は、ソ連崩壊により変化した。むろん、欧州統合という命題の意味はきわめて深遠なものであるが、根底には欧州の平和と安全の保障があり、その中心には、かつて何度も対立関係に陥り欧州の混乱を招いてきた仏独両国の調和の実現がある。また、欧州統合は欧州繁栄の基盤的条件となっており、通貨や治安・安全保障などの分野を好例に成果を上げてきた。おろらく、マルクもフランも、独立通貨のままであれば国際通貨としては弱体であったろうが、ユーロ統合によってはるかに大きな地位を得たし、同様に、治安問題、移民問題などの共同対処も、大きな力となっている。

現在、欧州連合は自らの利害を守る行動力をもつこと、あるいはその基盤整備を行うという動きを強めており、この実現は世界の安定にも大きな力を発揮しよう。一方、欧州連合は将来27カ国へと拡大される予定であるが、4億5千万人を抱える統合欧州は現在以上の多様性を内包するから、統合にはさらなる力を必要としよう。そのためには、統合の求心力となる執行部の明確化が必要になると思われる。明確化された執行部は、統合をより安定させ、その効率をより高めるものと思われるが、その手始めとして、統一された欧州連合の外相が考えられる。また、各機関の透明性を高め、民主的な意志を明確化することも重要であろう。

欧州連合に続いて、モンフェラン大使は、大西洋間関係について触れ、その重要性をまず指摘した。また、大使は米国との関係は米国独立直後の1779年からずっと同盟関係にあり、両国は一度も戦争を行ったこともなく、常に強い連帯、協調関係を維持してきたと述べた上で、今日でも、大西洋間関係は、NATOの第五条を基盤としており、その基本構造にはなんらの変化もないと指摘した。そして、NATOが成立した当時、欧州は弱体化しており、ソ連の脅威にNATOは晒されていたが、それ以降、欧州は繁栄を取り戻し結束力を増し、そしてソ連は崩壊し、その脅威は消滅した。こうした新たな条件はNATOにも充分考慮されなければならないし、政治、経済、その他諸々との均衡も図られなければならないだろう。こうした変化は、20、30年掛けて補強され、相互理解を深め、パートナーシップの強化など大西洋間関係を健全なものとしていくであろう。すでに、欧州連合はボスニアやマケドニアなどをはじめ幾つかの地域で成果を上げ、体制整備を進めており、国際社会の多極的な安定は可能になると思われる。

最後に、モンフェラン大使は質疑応答を行う形で、欧州統合の重要性と課題解決への積極姿勢の必要性などについて再度言及して、講演を締めくくった。

※この講演会は日本財団の助成事業により行っております。

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