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2015/11/30
第8回「日中関係シンポジウム」を北京で開催しました。

世界平和研究所(IIPS)と中国人民外交学会は2015年11月12日、「第8回日中関係シンポジウム」を北京で開催した。本シンポジウムは、政治・安全保障・経済・文化交流における日中間の課題を議論することを企図したものであり、2007年の開始以来、両国の関係者が交互に訪問する形式を取ってきた。


今回、日本からは佐藤謙・IIPS理事長を団長とする10名の代表団が訪中し、中国からは楊文昌・中国人民外交学会会長を含めた14名が議論に加わった。当日のレセプションでは、唐家璇・中国人民外交学会最高顧問(元国務委員)から歓迎の意が表され、日本側代表団の平沢勝栄・衆議院議員(自由民主党)と長島昭久・衆議院議員(民主党)が答礼した。


シンポジウム開会式では、木寺昌人・在中国日本国特命全権大使、楊会長、佐藤理事長が挨拶を行った。


第1セッションでは、「日中戦略的互恵のチャンスとチャレンジ--安全保障の観点から」をテーマに、藤崎一郎・IIPS副理事長を議長として、平田英俊・元航空自衛隊航空教育集団司令官(元空将)と楊伯江・中国社会科学院日本研究所副所長から報告があった。両者の報告を受け長島昭久・衆議院議員がコメンテーターとして問題を提起し、その後活発な意見交換が実施された。


過去の日中関係は、経済・人的交流を通じた関係構築が主流であったが、現在では、安全保障問題が日中間の重要な課題の一つとなり、日中関係は新たな段階に移行したとの共通認識を確認した。日本側からは、「東シナ海防空識別区」の設定、南シナ海での人工島建設など、中国による力を背景とした現状変更の試みは日本だけでなく周辺諸国の懸念事項にもなっていると伝達するとともに、国際法・ルールの遵守が戦略的互恵関係の基礎になると提起した。他方、中国側からは日本の平和安全法制に対する懸念が表明されるとともに、国際社会の既存のルールは、中国の国力が弱い時に定められたため、今日ではルールの「調整」が必要という反論があった。このように、見解の相違が際立つ場面もあったが、日中関係を改善する必要性については意見が一致した。不測の事態が発生することを回避・防止するための取組の進展が必要という点、両国の政治家・有識者はいたずらにナショナリズムをあおらず未来志向の関係を発展させていくことが重要という点も確認された。


第2セッションでは、「日中経済連携の課題と方策」をテーマに、張蕴嶺・中国社会科学院国際研究学部主任を議長として、金柏松・商務部国際貿易経済協力研究院研究員と田中賢治・株式会社日本政策投資銀行経済調査室長から報告があり、その後、意見交換を実施した。


日中の経済関係が「政冷経熱」から「政冷経涼」に移行しているのではないかという疑念が提起されたが、輸出入だけでなく日系中国企業の売上高も加味すると、日中は一衣帯水の関係にあるかけがえのないパートナーである事実が浮き彫りとなり、双方の認識ギャップは大きく解消した。この他、日本が抱える経済問題として人口減少やイノベーションの停滞が、中国側のそれとして過剰設備や法の支配の不徹底がそれぞれ指摘された。アジアインフラ投資銀行(AIIB)や「一帯一路」構想への日本の参画を期待するコメントも寄せられたが、日本側からはルールの透明性やガバナンスが欠如しているとの懸念が繰り返し表明された。環太平洋経済連携協定(TPP)が動き出そうとする中、日中韓の自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)といった広域連携でのルール構築は、低成長にあえぐ日本や構造改革を目指す中国の双方にとってメリットがあるという指摘もなされた。


第3セッションでは、「日中文化交流の促進」をテーマに、馮昭奎・中国社会科学院栄誉学部委員を議長として、王曉秋・北京大学歴史部教授と高原明生・東京大学大学院教授から報告があった。その後、コメンテーターの平沢勝栄・衆議院議員を交えた意見交換を実施した。


歴史問題をはじめとして日中の認識には隔たりが多いが、現状欠けている政治的な相互信頼を構築する上で文化交流が大きな役割を果たしうるという点で意見が一致した。実事求是の精神で認識・情報ギャップを埋めていくためには、青少年交流を通じた相互理解・友好促進など、文化発信だけでなく文化を受信する姿勢の重要性も強調された。また、アカデミズムでの交流を促進するため、共同研究、日中合同シンクタンクの設立といった様々な提案が双方から出され、関係改善に向けた強い意欲が示された。

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