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2022/12/12
11月16日にNPIウェビナー「デジタル化と都市・地域政策の将来像」を開催しました。

 2020年春に生じた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが引き起こした世界的な影響の一つとして、少子化の加速があります。我が国においても、出生数・出生率低下のインパクトは顕著であり、都市・地域レベルでみても、持続可能性やレジリエンスの低下等の中長期的課題が、より深刻化する可能性があります。

 他方、COVID-19を契機にテレワークが普及したことで、我が国でもさまざまな経済社会の課題解決に広くデジタル技術を活用しようとする試みが広まりつつあります。こうした動きが、新たな産業、財・サービスの創出や、それに伴う経済社会の変革につながり、中長期的な課題の解決の糸口になるかもしれません。

 このような問題意識のもと、経済社会研究会では、COVID-19がもたらした少子化の加速や近年のデジタル技術の普及・進展を踏まえ、研究や政策実務の第一線で活躍するパネリストに、今後の都市・地域政策を考える上での論点をそれぞれミニセミナー形式で解説していただき、新たな方向性を探る公開ウェビナーを開催いたしました。


[パネリスト]

太田 哲生 内閣官房デジタル田園都市国家実現会議事務局参事官(総括担当)

瀬田 史彦 東京大学大学院工学系研究科准教授/当研究所経済社会研究会委員

山村  崇 東京都立大学都市環境学部准教授

[モデレーター]

小峰 隆夫 大正大学地域構想研究所教授/当研究所常任研究顧問


当日は、官庁、企業、研究者、マスメディア等の方々の視聴参加を受け、活発な議論が交わされました。議論の主なポイントは以下のとおりです。


・人口減少やデジタル化への対応、環境共生への要請など、経済社会が大きく変化する中で、都市計画でも、何が本当によいことか、一義的に決めることが難しくなっているように思う。このような時代のまちづくりの要請に応えるためには、法令による規制や誘導による規範型のまちづくりから、住民の合意形成のプロセスを重視し、生活のしやすさを実感できるような共感型のまちづくりに転換し、どんどん実践していくことが重要だろう。


・知識産業集積は、都心ではなくむしろその周縁に群島のように形成され、都心にはないある種の「緩さ」が成功につながっている事例が多い。労働環境も、コロナをきっかけに、オフィス中心のピラミッド型から、自宅、コワーキングスペース等多様な選択肢がある網の目型への変化がみられる。デジタル、知識、あるいは創造の時代のビジネス空間では、一人ひとりのニーズにフィットし、その潜在能力が最大限に引き出されるような自由度が重要であり、まちづくりにおいても、細かいニーズに目配りしながら、こうした自由度の拡大を積極的に後押ししていくことが必要だと思う。


・政府が取り組んでいる「デジタル田園都市国家構想」を実現していくためには、自治体や住民による自主的な取組と国によるデジタル基盤の整備や支援策の実施とが、互いに連携する形で進められていく必要がある。その意味で、まちづくりに向けた機運、共感を高めていくことは重要なポイントであり、こうした政策的取り組みがなされていることが社会により広く共有され、デジタルを活用した地域づくりへの機運がさらに盛り上がっていくことが期待されていると思う。


・人口減少にせよ、デジタル化にせよ、あるいは働き方にせよ、人々の意識が大きく変わる中で、従来の考え方にとらわれず、公共、民間の役割も含めて常に対応を見直していく姿勢が必要ではないだろうか。例えば、都市と地域のメリット・デメリットが変わりうることを考慮に入れた上で、それぞれの進むべき道を考えるべきだろう。また、現役世代にとって最適な選択肢が、将来世代にとってはそうではないかもしれず、長期的な利害調整の方法を考える必要もある。「人々の共感」、「選択の自由」、あるいはデジタル化への対応で政府が強調する「誰一人取り残さない」という考え方は、こうした課題を考える際にそれぞれ通底するところがあるように思う。

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