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2024/03/08
3月7日に、NPI「知りたいことを聞く」シリーズ「2024年アメリカ大統領選挙と日米関係」を開催しました。

 NPI「知りたいことを聞く」シリーズは、人々が関心を寄せる旬のテーマについて、第一線の研究者・実務家に「知りたいこと」を投げかけて見解を聞く討論会です。2024年のアメリカ大統領選挙は、スーパーチューズデーが終わりましたが長丁場であり、今後目が離せません。さらにあわせて、選挙戦とその結果が日米関係にどのような意味合いを持つのか、について、今回は冨田浩司前駐米大使をお迎えし、現状の分析と今後の見通しを議論しました。


【パネリスト】

冨田 浩司 前駐米大使

【モデレーター】

藤崎 一郎 当研究所顧問/元駐米大使


 外務省はじめ諸官庁や企業、マスメディア関係の方々の視聴参加を受け、活発な議論が交わされました。当日、パネリストに問いかけた主要な質問は以下のとおりです。


・バイデン大統領の支持率が上がらない。高年齢を危ぶむ声があり、民主党に代わり得る人がいるとすれば現時点ではどんな人か。

・共和党はロシアに厳しいはずだったのに、対ウクライナ支援に後ろ向きであるのはなぜか。

・トランプ氏に岩盤支持層があるのは、格差が広がったこと、不法移民が増大したことなどで不満が鬱積していたのにうまく火をつけ、イメージづくりに成功したからではないか。

・トランプ大統領になれば関税、同盟国との関係、対中関係、環境政策、核戦略など大きく変化すると見られる。日本としてどのような心積もりでいるべきか。

・岸田首相は4月10日に訪米する予定だが、今の時点で見て日米関係の懸案は何か。


 これらの質問に対し、パネリストの発言のうちいくつかをまとめると要旨以下のとおりです。


・今回は特殊な大統領選挙。それぞれの党内で支持を固めきれていないし、無党派の動きも流動的。あえて予測すれば、二人の間の消極的選択であり接戦となるだろう。

・民主党では、手続き的にも党大会や全国大会で代わりの候補は決められるしそれに適していると思われる人材もいるが、挙党体制を築けるかはリスクがある。

・移民とウクライナが同次元で議論されているのは、米国第一主義と米国の国際社会へのコミットメントという二つの立場が緊張関係にあることを示している。

・トランプ氏の岩盤支持は、経済的不満が根にあるが、製造業衰退は50年前から起こっていた。今はそれに加え、政治が国民の不満を受け止められなくなっているという政治不信、予備選は岩盤支持層を持つ候補が強いという制度的要素、米社会の保守化、が関係している。

・個別政策については、トランプ大統領の一期目はチェック・アンド・バランスが働いたが、今はトランプ氏本人のグリップが強くなっている。またトランプ氏本人がどう考えるか(一期四年しかないので大統領権限でできることをやるのか、あるいはMAGA勢力が育っているので自分の後まで長期に考えるか)。ただトランプ氏は外交問題についてほとんど発言していない。また大統領一人で重要な政策転換は簡単にはできない。

・首相の公式訪問は、政府に加え議会、地方等幅広い聴衆に日本の価値を示す機会。日米関係は、米議会での超党派の日本支持など一定の継続性が期待できるが、首脳間のコミュニケーションを含め、オールジャパンで政権との意思疎通を強化していくことが必要である。広い意味での戦略的競争において価値を守るため、軍事力、経済力、グローバルサウス含めコミュニティーを広げること、人的交流含め、強靭な日米関係を維持していく必要がある。

 他方で上記の緊張関係は日本にも影響があり、二国間関係の管理だけではなく、トランプ政権の政策が国際関係全体に与える影響にも目を配りつつ、対応していくことが重要である。日米韓の協力の実績を積み上げるのもその一つであろう。

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