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外交・安全保障

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2018/06/29
防衛省防衛研究所と共催でグレーゾーン事態シンポジウムを開催しました。

 2018年6月26日開催 グレーゾーン事態への対処-その問題と対策-

 純然たる平時でもなく有事でもない事態、いわゆるグレーゾーン事態への対処が我が国の最重  要の課題となっており、中曽根康弘世界平和研究所では、有識者からなる研究委員会を発足させ、今年1月から上記問題に関する検討を開始し、この度「海と空のグレーゾーン事態への対処 -その問題と対策-」と題する提言書をとりまとめました。

 提言の主な内容は、以下の3点です。

1 対象海域で海上警備行動を発令することなく事態に効果的に対処するためのもの

2 対象海域で海上警備行動を発令し効果的に事態に対処するためのもの

3 多様化する領空侵犯事態に効果的に対処するためのもの

 本研究委員会は6月26日に防衛省防衛研究所と共催でシンポジウムを開催し、上記報告書を発表し、武力紛争法や海洋安全保障問題の権威である2名の招待スピーカーからコメントを頂きました。シンポジウムには100名以上の招待者が参加されました。本研究委員会のメンバー、防衛研究所報告者及び招待スピーカーは次のとおりです。

中曽根康弘世界平和研究所 グレーゾーン事態研究委員会

委員長  :齋藤 隆  元統合幕僚長

委員長補佐:福本 出  元海上自衛隊幹部学校長

委員   :佐藤 考一 桜美林大学教授

委員   :德地 秀士 元防衛審議官

委員   :平田 英俊 元航空自衛隊航空教育集団司令官

委員   :中村 進  元海上自衛隊幹部学校主任研究開発官

防衛研究所報告者

新垣 拓  主任研究官

飯田 将史 主任研究官

招待スピーカー

真山 全  大阪大学教授

松田 康博 東京大学教授

 まず開会の辞として、当研究所の佐藤理事長が、提言書作成の背景にある問題認識や今回の共催に至る経緯について述べました。

 その後、齋藤委員長の司会の下、防衛研究所の新垣主任研究官がグレーゾーンの概念的特徴について発表し、統合的な情報戦の必要性や相手がより大胆な行動をとるリスクの存在を指摘しました。飯田主任研究官は中国海警の改編とグレーゾーンについて発表し、軍が海洋権益保護の前面に出つつある点を指摘しました。

 続いて、德地委員がグレーゾーン事態の提議と全般的問題点について、福本委員長補佐が問題点とその対策について、それぞれ説明しました。

 説明後、招待スピーカーから本提言書に対するコメントを頂きました。まず、真山教授からはグレーゾーンという表現をいかなる文脈で使用しているかに関する質問等が、松田教授からは国外に日本の味方を増やすことや相手国の報道の真偽を迅速に判定して反応することの重要性の指摘がありました。これらのコメントを受けて、委員から本提言書ではグレーゾーンを法的な概念として捉えていない点や国内法上の根拠と国際法上の根拠の整合に特殊な問題が生じる日本の事情についての説明がなされました。

 最後に、聴衆との質疑応答が行われました。聴衆からのグレーゾーン事態の存在を認定/否定することで生まれる効果についての質問に対し、委員から本検討では認定/否定することよりも事実として把握することを重視した旨の回答がなされました。また、自衛官の平時の武器使用基準を緩和してグレーゾーン事態に対応することの是非についての質問に対し、自衛隊は武器使用を厳格に規制しており、安易な緩和は馴染まない旨の回答がなされました。

 活発な意見交換の後に、山本防衛研究所長から閉式の辞が述べられ、シンポジウムは盛況のうちに閉幕しました。

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