2019/04/16
米中経済研究会レポートNo.13ー 「中国製造2025・半導体の潜在力を考える」(江藤進主任研究員)を掲載しました。
米中経済研究会レポートNo.13ー 「中国製造2025・半導体の潜在力を考える」(江藤進主任研究員)
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(要旨)
〇米中新冷戦は長期化が想定され、中国製造2025の核心である半導体が標的の1つとなってきた一方、中国の半導体産業は外資依存等の課題も多く、現状を近視眼的に捉え、技術力に懐疑的な見方もある。他方、中国製造2025は当初より長期的視野の取組で、時間軸を変えると異なる姿も想定される。
〇中国の半導体は世界最先端に迫る分野も出始め、それを支える製造装置等のインフラの蓄積も相応に進む。中国は日米半導体摩擦等、他国の事例も活かした政策のもと、以前から官民による巨額資本等の支援に、M&Aやヒトを介した技術・ノウハウ・製造装置の移転等、技術水準の引き上げを加速し、供給面の手当を進めている。
〇中国は製品を受け入れるに必要十分な規模の国内市場を有する。開発した半導体の出口として、スマホは勿論、AIをはじめCASE等の多様な用途に加え、新たな利用方法としてスマホ決済等のサービスイノベーションまで、エコシステム(ビジネス生態系)が図らずも整いつつある。試行と改善を繰り返しながら、技術の進化が始まっている。
〇近年、建設ラッシュの300mm半導体工場は、公共ICカードや監視カメラ、指紋認証等、普及品で相当量が見込める社会インフラ向けも多く想定される。量産を含めた技術を磨くと同時に、これらの用途は監視社会システムの基盤を成すもので、他国製に頼らない国家管理(中国流スマート国家づくり)に加え、一帯一路への展開も否定はできない。
〇企業はグローバル化が進み、必ずしも国益とベクトルが一致せず、困難な時代に入っている。日本は、中国へは国際ルールの順守等を、米国には保護主義等に走らないように各国と連携し働きかけ、同時に以下により、半導体の再興を図る必要がある。
―過去の教訓を生かし、日本の半導体や製造装置、部材が、中国他、他国に代替されぬようにしたたかに取り組むとともに、一帯一路地域等への普及品の拡大に備える。
-中国への警戒を日本の機会とする一方、米国の各種規制等によるサプライチェーンの途絶に備え、調達・販路ともに複層化を図る。
-他国に依存する半導体生産体制の見直しや、技術(ハード)だけでなくアプリやサービス等の用途(ソフト)を含めたエコシステム創りに取り組む。
以上