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経済安全保障

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2021/03/18
横山主任研究員による研究ノート「永久磁石の材料「レアアース」は安定調達できるのか? 」を掲載しました。

 横山主任研究員による研究ノート「永久磁石の材料「レアアース」は安定調達できるのか? 」を掲載しました。

本文(PDF)はこちらからダウンロードできます。

(要旨)

○本年 1 月に米国でバイデン政権が発足したことから、気候変動対策が世界においてさらに加速される勢いである。気候変動の主因がCO2の大量排出とすれば、対策は、エネルギー源を化石燃料から再生可能エネルギー源(太陽光や風力)に変換することであるが、そうするとエンジン動力から モーター動力に置換されていくことになる。

○EV など自動車に適用するためには、強い磁力を持ち・比較的高熱にも耐えるモーターで、 かつ軽量化・効率化していかなければならないが、それにはレアアースとりわけネオジム (Nd)とディスプロシウム(Dy)が必須の材料である。

○レアアース資源の多くは低品位の鉱石で、しかも放射性物質と混合しており、本来適切な 環境対策なしに金属資源として製造することができない。 中国は 1990 年代から急激に生産を増やし、安値を武器に世界最大だった米国鉱山からシェアを奪い、今世紀には圧倒的な世界 No1 の生産国になっているが、その主因として環境対策にコストをかけていない疑いが強い。

○2010 年のレアアースショックにより、中国への警戒感が強まってきたが、米国の鉱山 はコスト競争に負けて経営破綻し、一部中国資本の入った企業の傘下に入り、精製工程は 手放してしまった(なお中国以外では豪州の鉱山が、マレーシアで精製していた)。 米トランプ政権発足以降の米中紛争で、米国は精製工程の再興にも注力、補助金を交付し 国内の精製工場の建設を促進している。

○実はここまでの対策で、永久磁石用のレアアースの供給が確保されるとは必ずしも言い 切れないことが問題。

○特に Dy のような重希土類は、中国やミャンマーで採掘されるイオン吸着鉱という放射性 物質を伴わない資源が高い競争力を持つ一方、通常の鉱山では構成比が非常に低く、しかも構成比の高い別の元素は、レアアースショック後の代替材開発等が奏功して、需要量を大きく減らしている。

○今後の対策として、①Dy 構成比の高い別の鉱石資源を開発する(但しこれもやはり放射性物質が混合している) ②わが国としては南鳥島近郊の深海底にあるレアアース 泥の開発が検討される ③Dy フリーひいては Nd 省資源化磁石を開発するといった取組みが考えられる。

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