2019/10/07
NPIメールマガジン(2019年3月7日号)
中曽根平和研究所(NPI)メールマガジン (2019年3月7日号)
日頃当研究所をご支援頂き、ありがとうございます。今後私どもは、「より開かれた」組織として「より早く」研究成果を皆様にお届けするため、遅ればせながらメールマガジンを始めます。第一級の報告に絞り、読みやすい形でまとめます。ぜひご一読いただき、できればコメントをお寄せくださいますようお願い申し上げます。
このメールマガジンは当面お送り申し上げますが、いずれ会員企業向けのサービスに移行する予定です。会員企業には、専門家や実務家との意見交換会の席も設けております。会員企業へのご参加を検討して頂けますと幸いです。なお、本メールの送付が不要の場合には、末尾をご覧ください。
理事長 藤崎一郎
【目次】
1.特集記事
2.研究活動のご案内
3.刊行物のご案内
4.イベント・お知らせ
【特集記事】
現地から見る「一帯一路」政策
上席研究員 川島真
先進国からの一帯一路政策批判
貿易における不公正や知的財産の侵害、さらにはウイグル人「再教育」問題など、多岐な論点で中国への批判が強まっている。中国が急激に政策を転換したわけではないので、突然批判が高まったことは中国から見れば理解に苦しむものと思われる。
一般に指摘される一帯一路政策の問題点としては、返済能力を超えた貸付、透明性、政治や軍事面での結びつきなどがある。だが習近平政権は、これらの点について王毅外相が返済能力を超えた貸付について具体的な対策を発表するなど、批判をかわしつつ、一帯一路のアフリカでの展開に強い意欲を示している。しかし、そこには多くの課題が残されている。
国内からの一帯一路批判
最近の課題としては、中国国内から一帯一路への疑義が強く提起されるようになったことがある。米中対立などにより、中国経済の先行きへの不安が募る中で、批判の矛先が対外「過剰」投資に向かっているのだ。海外への投資を、国内経済の再興に向かわせるべきだというのである。これは不況時の日本のODA批判に重なる。
大学においても状況は同じである。大学には一帯一路の対象国から多くの奨学生が訪れ、彼らには宿舎などの面で優遇措置がとられ、国内の学生との間に不公平が生じるなどの問題が発生している。これもまた、一帯一路政策への批判へと結びつく。
自由貿易とマルチラテラルな国際関係?
国際社会、とりわけ先進国からは中国の目指す国際秩序像にも疑義が呈される。中国が提唱している「新型国際関係」では、利益分配に基づくウィンウィン関係を基礎にした運命共同体ができるという。これは、民主主義の拡大が国際社会の平和と発展を育むという根本的な部分を共有しない点で、先進国の想定するリベラルな国際関係とは異なる。
だが、アメリカとの間で貿易摩擦が生じると、中国は自らが自由貿易の擁護者であるとし、またマルチラテラルな国際関係を重視する姿勢を示しているが、これは選択的に中国に有利な秩序の支持を言っているのであり、既存の国際秩序の継承者になることを意味しているのではないだろう。
アフリカ諸国は「天然同盟軍」?
先進国を中心に中国への批判が高まる一方、世界全体から見て中国が孤立しているわけではない。2018年7月末に習近平主席は、アフリカ諸国が中国の「天然同盟軍」だと述べた。この言葉が適切であるか別にして、途上国から見た場合、中国との開発プロジェクトの魅力には抗しがたい。また、先進国の「正義」は必ずしも世界全体に通用するわけではない。その点で、中国には依然として一定の支持層があると思っていいだろう。
現地から見る中国の「魅力」
中国への批判が高まっても、国内インフラを整え、経済発展を加速させたい途上国にとって、その支援は魅力的である。規模が縮小し、様々な条件が付けられる上に時間がかかる先進国の支援に対して、中国は多額のプロジェクトを立ち上げ、決定は迅速で条件も少ない。
国内需要の停滞に苦しむ中国にとっても、一帯一路計画は中国企業の世界進出の足掛かりとなる。中国政府はもっとも優位性を持つ経済力を利用しながら、政治外交面、軍事・安全保障面での影響力を強化しようとする。だが、それがどの程度成功するかは世界の国々や人々が中国を受け入れるのか否かにかかっている。
中国の「弱点」
一帯一路などを見るときに中国政府や党が一元的に管理しているかのような見方をするのは適切ではないだろう。省政府や国有企業、民間企業、果ては個人に至るまで多様な主体が海外に進出しているのである。そうした意味では政府や党の言葉だけでなく、ひとつひとつのプロジェクトや、ひとつひとつの国と中国との関わりを注意深く見なければない。
またゼロサム的な見方も禁物だ。利益分配を基礎にする「新型国際関係」にとって、資金の減少は決定的であり、経済頼みの中国の対外政策もまた実現できなくなる。これを中国の弱点であるとか、政策の破綻などと捉えられる面もあるが、他方で一帯一路を支える豊富な資金供給が停滞すれば、多くのプロジェクトが酸欠状態になり、現地国の経済も厳しくなる。日本や欧米先進国が代わりに資金供給をするわけでもない。中国だけを見るのではなく、より広い視野で一帯一路を捉えていく必要があるだろう。
※NPI Quarterly第9巻第4号(2018年10月)に掲載された記事を要約、一部修正したものです。
(https://www.npi.or.jp/publications/iips_quarterly_09_04.pdf) ※pdfファイルが開きます
【研究活動のご案内】
こちらでは、研究所の様々な研究活動について、その成果や提言を中心にご案内致します。
政策提言(https://www.npi.or.jp/research/policy/index.html)
〇設立30周年記念政策論集(2018/12/12)
https://www.npi.or.jp/research/2018/12/12174550.html
※記念式典につきましては、以下のページもご覧ください。
・「中曽根平和研究所 設立30周年記念式典」を開催(2018/12/12)
https://www.npi.or.jp/event/2018/12/12131307.html
・「中曽根平和研究所 設立30周年記念式典」詳細(2018/12/17)
https://www.npi.or.jp/event/2018/12/17094832.html
研究レポート(http://www.iips.org/research/kind/report/)
〇貧困の高齢化にいかに対応するか(2018/12/13、田中主任研究員)
https://www.npi.or.jp/research/2018/12/13202743.html
研究ノート(http://www.iips.org/research/kind/note/)
〇「ダボス会議と多国間関係「4.0」-「Globalization 4.0」&「第四次産業革命」におけるHow To Manage-」(2019/01/31、岩田主任研究員)
https://www.npi.or.jp/research/2019/01/31101001.html
コメンタリー(http://www.iips.org/research/kind/commentary/)
〇米中貿易交渉の行方-大胆予想(2019/02/27、杣谷主任研究員)
https://www.npi.or.jp/research/2019/02/27181538.html
【刊行物のご案内】
こちらでは、研究所が刊行するNPI Quarterly(季刊)や、Asia-Pacific Review(英文ジャーナル)、研究員の著書・論文などについて、ご案内致します。
〇NPI Quarterly 第10巻第1号(2019年1月号)
https://www.npi.or.jp/publications/2019/02/04095941.html
【イベント・お知らせ】
こちらでは、研究所が行ったイベントやその他の情報について、ご報告致します。
〇高橋主任研究員が幸福度研究の国際的学会ISQOLSの理事、副会長に就任しました(2019/03/04)
https://www.npi.or.jp/research/2019/03/04135635.html
〇白川方明前日銀総裁との意見交換を実施(「知りたいことを聞く」シリーズ)(2019/02/25)
https://www.npi.or.jp/research/2019/03/07094655.html
〇「日本そして世界の人口動態がもたらす政治経済社会的課題-その解決に向けてー」(森田朗 津田塾大学総合政策学部 教授)(2019/02/14)
https://www.npi.or.jp/research/2019/03/04094125.html
〇岩田主任研究員がBSテレ東の番組に出演しました(2019/02/05)
https://www.npi.or.jp/media/2019/02/05174059.html
〇森上席研究員の論考がThe Diplomat誌に掲載されました(2019/02/04)
https://www.npi.or.jp/media/2019/02/04094159.html
【お問い合わせ先】
このメールマガジンは、ご登録頂いた皆様および役職員が名刺を交換させて頂いた方々を中心にお送りしております。
・NPIメールマガジンの配信停止はXXXX
本メールマガジンの内容を引用する際には、出典を明記くださいますようお願い致します。
中曽根平和研究所(NPI)
〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目2番2号 30森ビル6F
TEL 03-5404-6651 / FAX 03-5404-6650
https://www.npi.or.jp/