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2019/10/07
NPIメールマガジン(2019年9月17日号)

NPIメールマガジン(2019年9月17日号)

【目次】
1.特集記事
2.研究活動のご案内
3.刊行物のご案内
4.イベント・お知らせ

【特集記事】
平成の経済を振り返る
常任研究顧問 小峰隆夫(大正大学地域創生学部教授)

 本稿では、平成の経済に関する私の考えを述べたい。要点は以下のとおりである。
1)平成時代には、我々にとって未知の課題が次々に現われた。
2)これら未知の諸課題は、経験がないだけに、その本当の問題点が社会的認識として浸透するのにかなり長い時間を要した。
3)遅れた社会的認識に引きずられたため、現実の政策発動は最適なタイミングを逸し、場合によってはかえって問題を大きくしてしまった。
4)こうしたことを防ぐことはかなり難しい。
 以下では、私がこうした考えを強く持つきっかけになった三つの例を紹介しよう。

■バブルの生成と崩壊
 80年代後半に猛威を振るったバブルは、当時のGDPさえ上回るキャピタルゲイン(値上がり益)をもたらすほどの規模であり、消費と投資を強く刺激した。経済成長率は高まり、雇用情勢は改善し、財政は好転し、当時大きな懸案であった経常収支黒字も急速に減少した。
 ところが、キャピタルゲインの恩恵は、そもそも資産を持っている人だけが享受できるものだ。資産を持たない多くの一般の人々にとっては、地価の上昇でマイホームに手が届かなくなり、マイナスの影響をもたらすものでもあった。
 そこで80年代末以降は、土地関連融資の抑制を求める通達を出したり、公定歩合を引き上げたりするなどの、バブル潰しの政策が実行された。その結果、バブルは崩壊し、経済情勢が悪化したのである。
 本来であれば、このような政策は直ちに停止すべきだった。しかし、世論のバブルへの反感は強く残り、それが政策の転換を遅らせ、結果的にバブルの傷跡を大きくしたと言える。

■不良債権への公的資金投入
 バブルの過程では、資産の担保価値が上がって借り入れが容易になるため、負債も膨張する。バブルの崩壊で資産が縮小しても、負債は残る。企業側から見れば返済の難しい負債が増え、金融機関側から見れば不良債権が増えるのである。
 この問題の深刻さをいち早く認識した宮澤総理は、92年夏に不良債権を公的資金で処理する考えを示唆したが、四面楚歌の状態に陥って断念した。その後、95年末に住専の処理問題を経て、公的資金の導入は完全にタブー視されることになる。
 こうして抜本的な処理をためらう間も、不良債権は累積し続けた。金融機関の破綻が現実化するに至って、ようやくこのタブーが解け、数十兆円の公的資金が注ぎ込まれることになったのだ。
 一見すると、金融機関への公的資金投入は、税金の無駄遣いに見えるから、国民の批判を受けやすい。そうした国民意識を恐れて公的資金の導入が遅れ、結局大きな国民的コストを払うことになってしまったのである。

■デフレの弊害についての認識の遅れ
 今でこそ、デフレ問題の重要性は認識されている。しかし2000年頃までは、物価政策とは「物価の上昇を抑えること」であり、物価の下落はむしろ望ましいことだという社会認識が支配的だった。
 80年代後半、ドルで測った日本の一人当たり所得は、世界有数の高さになった。ところが国民の多くは、豊かさをとても実感できない。それは、日本の物価が高いからだ。よって日本の物価を他の先進国並みに引き下げれば、本当の豊かさを実感できるようになるという、分かりやすく政策的スローガンとしても魅力的な議論が浮上した。
 しかし、このように経済学的な基礎を欠く議論に基づいて、物価政策が国民的支持を背景に物価の引き下げにこだわる中で、デフレの弊害への認識が遅れ、政策的対応が後手に回ったという面がある。

 以上、社会的認識の遅れや見当違いの認識が、ただでさえ難しい諸課題への取り組みを遅らせて、大きな混乱を招いた例を見てきた。これをいかにして是正するか。地道ではあるが、その時点でできるだけオーソドックスな経済の論理に沿った政策、エビデンスに基づいた政策運営を行うことであろう。短期的な社会的認識の誤りを乗り越えて、長期的視点で適切な政策運営をいかに実現していくのか。令和経済に残された大きな宿題である。

※NPI Quarterly第10巻第3号(2019年7月)に掲載された記事を要約、一部修正したものです。
 本文はリンク(https://www.npi.or.jp/publications/iips_quarterly_10_03.pdf) からダウンロードできます。

※小峰常任研究顧問の単著『平成の経済』については、以下のページをご参照ください。
 https://www.nikkeibook.com/item-detail/35801

【研究活動のご案内】
 こちらでは、研究所の様々な研究活動について、その成果や提言を中心にご案内致します。

研究ノート(http://iips.org/research/kind/note/)
〇韓米FTAで韓国はどう変わったのか(2019/09/02、百本主任研究員)
 https://www.npi.or.jp/research/2019/09/02135925.html

コメンタリー(http://iips.org/research/kind/commentary/)
〇WTO協定と規制;安全保障のための輸出管理との関係は?(2019/08/21、木村主任研究員)
 https://www.npi.or.jp/research/2019/08/21103901.html

【刊行物のご案内】
 こちらでは、研究所が刊行するNPI Quarterly(季刊)や、Asia-Pacific Review(英文ジャーナル)、研究員の著書・論文・その他の活動について、ご案内致します。

〇NPI Quarterly (第10巻第3号)
 https://www.npi.or.jp/publications/2019/08/09092829.html

〇高橋主任研究員のコメントがテレビ朝日のニュース「秋篠宮さまご夫妻ブータンへ」において紹介されました(2019/08/21)
 https://www.npi.or.jp/media/2019/08/21102219.html

〇高橋主任研究員の研究成果が英語書籍で出版されました。(2019/08/09)
 https://www.npi.or.jp/media/2019/08/09110846.html
【イベント・お知らせ】
 こちらでは、研究所が行うイベントについてご報告致します。

〇「知りたいことを聞く」シリーズ「戦後処理をめぐる論争:日中関係--これまで、今、これから」(2019/07/25実施)
 https://www.npi.or.jp/research/2019/08/05093014.html

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