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2019/10/25
NPIメールマガジン(2019年10月21日号)

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NPIメールマガジン(2019年10月21日号)

【目次】
1.特集記事
2.研究活動のご案内
3.刊行物のご案内
4.イベント・お知らせ

【特集記事】
AIと、"わかる"ということ
主任研究員 岩田祐一

■AI(人工知能)のスタートアップ企業買収をめぐるフシギ

 米国の調査会社CB Insights社は先月9月、AI(人工知能)のスタートアップ企業の買収争奪戦に関する分析レポートを発表した[1]。2010年以降の累積買収件数では、Appleがトップで20社、Googleが14社、Microsoftが10社と、続いてFacebook、Amazon.comと、米国の巨大IT企業がトップ5を占めた。
 これを聞いて、「なるほど」と思われる向き、そして「なぜ?」と思われる向き、両方がおられるかと思う。
前者の方は「IT本業とのシナジー(相乗効果)」という納得感であろうが、後者の方は「なぜIT本業の会社が、そういうAIの出来立てほやほやの会社をわざわざ買うのか?」という疑問でらっしゃるかと思う。
 実はここに、"AI"と"わかる"との、関係がある。

■AIが"わかる"しくみ

 AIは、ソフトウェアから主に成り立つものだが、そのソフトウェアは、アルゴリズム(問題を解決するための手法・手順のプログラム)の組み合わせからなっている。
 このソフトウェアおよびアルゴリズムは、現時点では、「ゲームで勝つためのもの」と「画像を認識・特定するためのもの」そして「音声を認識するためのもの」では、それぞれ異なる。[2][3]
さらに、それらをより精緻化・高度化していくために、現在主流のディープラーニング(深層学習)という手法では、精度の高い関連データをより多く自己学習させることが必要となっている。[4]
 つまり現時点では、"AI"が"わかる"ためには、"目的にあったアルゴリズム(の組み合わせ)"を、より多くの関連データを学習させることで、磨いていくことが必要であって、その行きつく先が、"わかる(ように見える)"ということである。

■AI開発と、適材適所

 米国IT大手がAIスタートアップ企業の買収に積極的な目的は、AIを活用する目的毎に、それに合った分野・技術を磨いている企業を買収する、ということをご理解いただけたかと思う。
 そして、AI活用の目的にあったアルゴリズムを磨くためには、必ずしも大企業の内部でそれを行うよりも、それに特化して優秀なメンバーで開発を行っているスタートアップ企業のほうが、より早く効率的に一定水準を達成する可能性があることも、お感じ取りいただけるのではないかと思う。
 つまり、優れたAIの開発にあたっては、"適材適所"が、極めて肝要であるといえる。

■AIが、人間同様に"わかる"日への、ハードル

 そのハードルには様々なものがあるが、最も難しい(そして人間が自然に成し遂げている)ものの1つが、「矛盾を避ける」仕組みである。
 ルールに基づく、目的特化型のAIについては、そのルールに沿う形で矛盾が生じないよう、ソフトウェアおよびアルゴリズムへの実装で、工夫がなされている。しかし、ルールの定義を一意に明確にしがたいもの(例えば日常会話)においては、矛盾を避ける工夫を実装することが容易ではない。
 一例をあげると、以下のような感じだ。
ヒト:「あなた、食べ物で何が好き?」
AI:「カレーライス」
ヒト:「辛い物が好きっていうこと?」
AI:「そう」
ヒト:「では辛いラーメンは?」
AI:「麺は嫌い」
ヒト:「辛い物でも好きなものと嫌いなものがあるんじゃない・・・」
AI:「・・・・・(よくわかりません)」
 これは、AIに「辛い物には様々なものがある」「辛い物でも自分の嫌いな条件が付加されると嫌い」ということを、論理付け、表現できるようにすることでクリアされるが、今のAIでは一事が万事、そうした処理を個別定義しないと、矛盾を回避することが難しい。
 このように、AIに「人間らしく"わかる"」ことを求めるには、まだまだ時間がかかり得る。ただしそこに向けては、一歩ずつ、着実な歩みがあるともいえよう。


[1]原文はこちら(https://www.cbinsights.com/research/top-acquirers-ai-startups-ma-timeline/) 日本語訳はこちら(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50509960S9A001C1000000/)
[2]代表的なものでは、ゲーム(囲碁)で世界トップ棋士に勝利したAlphaGo、音声認識でスマートフォン(iPhone)などに搭載されているSiri、など。
[3]誤解を恐れずに大胆に喩えるならば、同じ球技でも、バレーボールとサッカーと野球とでは、ルールや道具、身体の動きが異なるため、得意不得意が分かれるようなものである。
[4]これも誤解を恐れず大胆に喩えるならば、「(計算ルールを事前に詳しく教えることなく)難しい数学ドリルの問題をひたすら解かせることを通じて、計算ルールを自ら整理させ、正答率をあげていく」といったイメージである。(ちなみに筆者個人はこういう訓練!?が大変苦手である・・・)


【研究活動のご案内】
 こちらでは、研究所の様々な研究活動について、その成果や提言を中心にご案内致します。

研究レポート(http://www.iips.org/research/kind/report/)
〇コーベットの海洋戦略から読み解く新防衛大綱(2019/10/03)
 https://www.npi.or.jp/research/2019/10/03105226.html

研究ノート(http://iips.org/research/kind/note/)
〇米中経済研究会レポートNo.17ー「インド経済の飛躍と日本の進出の可能性を探る」(横山昭雄主任研究員)を掲載しました。(2019/10/10)
 https://www.npi.or.jp/research/2019/10/10110024.html

【刊行物のご案内】
 こちらでは、研究所が刊行するNPI Quarterly(季刊)や、Asia-Pacific Review(英文ジャーナル)、研究員の著書・論文・その他の活動について、ご案内致します。

〇メールマガジンのバックナンバーを公開しました。(2019/10/07)
 http://www.iips.org/news/2019/10/07102856.html

〇橋場主任研究員の寄稿「中南米諸国のダイバーシティ」が陸上自衛隊の関連誌『修親』10月号に掲載されました。(2019/10/03)
 http://www.iips.org/news/2019/10/03104403.html

〇高橋主任研究員のコメントが読売新聞夕刊1面に掲載されました。(2019/09/30)
 https://www.npi.or.jp/media/2019/09/30104704.html

【イベント・お知らせ】
 こちらでは、研究所が行うイベントについてご報告致します。

〇情報研・米中経済研所内勉強会「AI・デジタル・5G時代の 変容するクロスボーダービジネスをめぐる 諸問題への考察」 (2019/10/03開催)
 https://www.npi.or.jp/research/2019/10/16153456.html

〇中曽根平和研究所・公開シンポジウム 「中国、どうなるか!? どうすればよいか?」(2019/10/03)
 https://www.npi.or.jp/research/2019/10/03114719.html

〇第10回 東京-ソウル・フォーラム(2019/09/20-21開催)
 https://www.npi.or.jp/research/2019/09/27093839.html

【お問い合わせ先】
 このメールマガジンは、ご登録頂いた皆様および役職員が名刺を交換させて頂いた方々を中心にお送りしております。
 ご意見を頂戴できる場合は、本メールマガジンの配信用アドレス(news@iips.org)までお寄せください。
 なお、原則として返信致しかねますので、ご了承ください。

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〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目2番2号 30森ビル6F
TEL 03-5404-6651 / FAX 03-5404-6650
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