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2019/12/13
NPIメールマガジン(第12回日中関係シンポジウム概要)

NPIメールマガジン(第12回日中関係シンポジウム概要)

 中曽根平和研究所(NPI)と中国人民外交学会は2019年11月27日に「日中関係シンポジウム」を北京で開催した。今回のシンポジウムは、世界が大きく変動する環境のもと、日中は大阪G20おける9年ぶりの中国国家主席の訪日や、来春の習主席の国賓としての訪日が予定されるなど、両首脳が長期的に安定した日中関係を構築することで一致する中での開催となり、全体として前向きな議論が活発に行われた。
 本シンポジウムは、政治・安全保障、経済、交流等に関する日中間の課題の議論を目的に2007年に日中国交正常化35周年を記念して始まって以来、両国の有識者が交互に訪問する形式で実施されてきた。
 第12回に当たる今回は、日中双方の有識者約30名(日本からは中曽根弘文NPI副会長を団長とする11名、中国からは王超人民外交学会会長を団長とする18名)が参加し、幅広い議論を交わした。シンポジウム開会式では、三村明夫NPI副会長、及び王超外交学会会長、植野篤志駐中国公使が挨拶を行った。

 各議論は、11月25日の習主席による「日中関係に関する8つの論断」を受け、日中関係が前向きな中で、建設的な対話を行うことで合意して始まった。

 第1セッションでは、「時代に即し、新時代に見合った日中関係を築く」をテーマに、江瑞平元外交学院副院長を議長として、宮本雄二元駐中国大使と高洪中国社会科学院日本研究所学術委員会副主席から報告があり、その後、コメンテーターの程永華元駐日本大使をはじめとする参加者により、意見交換を実施した。
 主な論点として、(1)日中の関係改善と新時代の役割 (2)日中双方の認識ギャップ (3)相互信頼の醸成等について活発な議論が行われた。
 まず、日中関係は近年大きく改善し、両国は大国として、新時代に見合った役割が求められ、例えばWTO等の国際公共財を堅持し共に協力改革していく必要性を共有した。
 一方、中国は日本が冷戦思考にとらわれて日米同盟を堅持するのは外交上マイナスであるとし、日本は中国の軍事力増強と現状変更の姿勢こそが中国脅威論の核心をなしているとするなど双方に認識のギャップも存在していることを確認した。邦人拘束では中国が日本に事前の教育を求める一方、日本は基準を示すよう要請した。また、日中双方の理解が必要とされる中、訪日中国人は増加の一方、訪中日本人は減少している点と、訪問しても表面的な観光で終わりではなく、より深い理解が必要である点を共有した。
 最後に新時代における交流の「3つの足」として、人的交流、政治交流、経済交流をさらに推進し理解を深めることが大事であり、そのためには相互の社会への信頼が必要であることが指摘された。かかる中、若者の日中交流の仕組み作りが提案された。

 第2セッションでは、「世界政治・安全保障の大きな変化と東アジア」をテーマに、藤崎一郎NPI理事長を議長として、徳地秀士NPI研究顧問と胡継平中国現代国際関係研究院副院長から報告があり、その後、コメンテーターの久保文明NPI研究本部長と陳小工元中国人民解放軍空軍副司令官をはじめとする参加者により、意見交換を実施した。主な論点としては、(1)アジア太平洋地域における米中対立 (2)自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)と一帯一路構想との関係 (3)日中の安全保障を巡るジレンマの行方 (4)北朝鮮の核問題への対応の4点について活発な議論が行われた。
 まず、アジア太平洋地域における米中対立については、米中の相互不信がその原因であり、同地域では時代と逆行するような軍拡を伴う厳しい対立を招いているといった大きな懸念が寄せられた。また、仮に米大統領が交代となっても米中対立は大きな変化がないとの見方が多いとの指摘がなされた。
 次に、我が国の「自由で開かれたインド太平洋構想」と中国の「一帯一路構想」については、中国側からはFOIPが中国の加入を排除した対中国的構想ではないかとの懸念が示され、また日本側からは所謂「債務の罠」の問題など一帯一路に係る不透明性が民間企業を含む日本の消極的姿勢となっているとの見解が示された。このように日中間での相互理解はまだ不十分であるものの、日中の連携を進めていく点では双方の認識の共有が図られた。
 安全保障政策に関しては、日本側からは中国の南シナ海での人工島の建設や尖閣諸島周辺での厳しい対立への懸念が示された一方、中国側から我が国の防衛力の増強や憲法改正の動向に対する憂慮がのべられるなど、相互信頼が不十分な点がある現状が浮き彫りにされた。このような状況を改善するため、大臣級のハイレベルな人的交流や対話を進めるとともに、新たな交流の形態として両国艦艇の相互訪問が重要であることを双方で認識することができた。
 最後に、朝鮮半島情勢についても意見交換が行われ、北朝鮮の核開発問題は単なる米朝間の問題ではなく、国際社会全体としてこの問題に取り組む必要があることが指摘された。

 第3セッションでは、「世界経済の変化にいかに対応していくか」をテーマに、楊伯江中国社会科学院日本研究所所長を議長として、丸川知雄東大教授と趙晋平元国務院発展研究センター対外経済研究部部長から報告があり、その後、荒井寿光NPI副理事長と陳文玲中国国際経済交流センター総経済師をはじめとする参加者により、意見交換を実施した。
 論点としては、(1)中国の飛躍と世界経済の課題 (2)日中の相互依存 (3)中国への期待他、多岐にわたる活発な議論が行われた。
 まず、中国は特許の国際出願件数では既に日・独を抜き、世界第2位で、早晩米国を抜き、第1位になる可能性も出てきている等、中国経済は飛躍している等を改めて共有した。一方、世界は5つの低(成長・投資・金利・インフレ・収益・出生率)と3つの高(債務・レバレッジ・高齢化)の問題を抱えているが、日中には高齢化等の共通課題もあり、多くの分野で協力が可能である点が指摘された。
 次に米中貿易摩擦では、中国だけではなくグローバル経済に影響を及ぼしており、中国は日本から輸入する中間財をもとに対米輸出するものも多いため、我が国への影響も大きいという事実から、日中が相互に依存している現状を確認した。かかる中、WTO改革、RCEPの早期妥結、デジタル革命が進む中でのルール作り、環境保護等での協力の必要性を共有した。
 また、企業がグローバル化し、必ずしも国益とベクトルが一致せず困難な時代になる中、中国に対してはサプライチェーンの途絶回避とともに、標準づくりやオープンイノベーションでの連携、外国投資法の適切な運用、東日本大震災による食品の輸入禁止の解除を要請した。特に両国民の認識を変えるため、成功事例を生み出していく必要性を指摘した。

 閉会式では、藤崎一郎NPI理事長と欧渤芋中国人民外交学会副会長によってシンポジウム全体の総括が行われ、その成果と課題について双方の認識を共有した。また、藤崎理事長により、本シポジウムの成果として日中の政・官・学・メディアの若手リーダーの育成と交流推進のための構想と両政府への働きかけが提起され、欧副会長からも賛同が得られた。

 シンポジウムに引き続き、中国人民外交学会で行われたレセプションでは、中曽根弘文NPI副会長から王超外交学会会長に対して、シンポジウム開催とレセプションへの招待について謝辞が述べられた。また、中曽根副会長から、日中韓の子供たちによる童話交流を紹介しながら、日中関係の新時代の将来を担う青少年や若手リーダーの交流を推進していく方針が明らかにされ、王会長と合意に至るとともに、植野篤志駐中国公使からは大使館も積極的に協力していく旨の支持があった。

以上

※第12回日中関係シンポジウムについては、以下のリンクでも掲載しております。
 http://www.iips.org/publications/2019/11/28144457.html


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