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2020/11/19
NPIメールマガジン(北朝鮮―金与正談話と軍事的緊張)

NPIメールマガジン(北朝鮮―金与正談話と軍事的緊張)


【目次】
1. 特集記事:北朝鮮―金与正談話と軍事的緊張
2. お知らせ:オンラインセミナー「米中対立をどう見るか」の開催(6月28日)
3. 研究活動のご案内
4. 刊行物のご案内


【特集記事】
北朝鮮―金与正談話と軍事的緊張
西野純也(上席研究員)

 北朝鮮による韓国への挑発的言動によって朝鮮半島では緊張が高まっている。6月以降続く挑発のスタートとなったのは、6月4日の『労働新聞』に掲載された金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会第1副部長の談話であった。同談話で金与正氏は、脱北者団体による「反共和国ビラ」を批判するとともに、開城工業地区の完全撤去、南北共同連絡事務所の閉鎖、南北軍事合意の破棄の可能性を示唆した。9日に南北間の連絡網を遮断した後、金与正氏は13日に再び談話を出して南北共同連絡事務所の爆破を予告し、16日にそれを実行し国内外に公開したのである。経済的な困難が続く中で、体制引き締めを企図していることが国内への報道からはうかがえる。
 加えて、今回の北朝鮮の言動から明らかなのは、2018年に3回行われた文在寅・金正恩会談での南北合意を韓国が全く守っていないことに対する怒りである。また、金与正氏は17日にも談話を出し、米韓同盟を重視して何もできない文在寅政権の「事大主義」を強く非難した。文政権が大統領特使として鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長らの派遣意向を伝えてきたことを暴露するなど、北朝鮮には韓国と対話する考えはないようである。むしろ、文政権との関係のリセットに向けて、これまでの南北合意を一つ一つ崩しているように見える。中途半端に南北関係を維持しても韓国からは限られた経済協力しか得られず、米朝の「仲介者」としての韓国の役割も終わったと判断したのだろう。もともと北朝鮮にとって重要なのは米国との関係であって南北関係の優先順位は高くない。昨年2月のハノイ米朝首脳会談の失敗以降、6月に習近平国家主席の訪朝を実現するなど中朝関係の強化に努め、さらにミサイル発射を繰り返して「新しい戦略兵器」の開発に邁進してきたという事実は、北朝鮮が韓国にまったく期待していないことをすでに示していた。
 憂慮すべきは、北朝鮮が軍事的な行動を予告したことである。朝鮮人民軍総参謀部は17日の談話で、(1)開城工業団地工業団地と金剛山観光地区への部隊展開、(2)2018年9月の南北軍事分野合意により撤収した非武装地帯(DMZ)軍監視所の再設置、(3)黄海上を含む全ての前線に配置された砲兵部隊の態勢強化と軍事訓練の再開、(4)韓国へのビラ散布のための前線地域開放などを行うと明らかにした。13日の金与正談話が「次の行動の行使権を軍の総参謀部に渡そうと思う」と述べたことを受けて、具体的な計画を示したと言える。南北共同連絡事務所の爆破が迅速に行われたことが示すように、これらの行動も時間を置かずに実行される可能性が高い。しかし、北朝鮮は韓国領土への直接的な軍事攻撃を慎重に避けることで、軍事的緊張を巧みにコントロールするかもしれない。それだけではない。トランプ政権の「レッドライン」を超えうる長距離の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射は避けつつも、開発を続けてきた「新たな戦略兵器」である潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などを試射し、いずれ瀬戸際外交を展開してくる可能性もある。今後、朝鮮半島情勢は南北関係の悪化だけに限定されない深刻さへと発展することを前提に、日本は国際社会と連携して情勢変化に能動的に対処していく必要がある。


【お知らせ】
 当研究所は、東大社会科学研究所現代中国研究拠点と共催で、下記のオンラインセミナーを開催いたします。

●東京大学社研現代中国研究拠点(中曽根平和研究所との共催)オンラインセミナーシリーズNo.5
「米中対立をどう見るか -アメリカ大統領選挙と経済・技術・安全保障- 」
日時:6月28日(日) 10:30~12:00

 新型肺炎の感染拡大の下で米中対立は一層激化している。トランプ大統領の「口撃」は選挙を見据えたものではあろうが、かといって選挙がなくなれば米中対立がなくなるというわけではない。では現在の米中対立はどのように捉えるべきなのか。またそれは新型肺炎の感染拡大の中でいかに変容し、今後は何が焦点になっていくのか。このウェビナーでは、米中の双方の観点から、米中対立の様相を、大統領選挙も視野に入れながら多角的に捉える。

司 会: 研究本部長  久保 文明  東京大学法学政治学研究科教授
パネリスト:  上席研究員  川島 真 東京大学総合文化研究科教授
        上席研究員  森 聡  法政大学法学部教授
お申込み : 事前登録制です。下のURLからお申し込みください。
https://utokyoccrb.wordpress.com/2020/06/11/オンラインセミナーno-5「米中対立をどう見るかー-2/


【研究活動のご案内】
 こちらでは、研究所の様々な研究活動について、その成果や提言を中心にご案内致します。

研究レポート(http://iips.org/research/kind/report/)
〇高橋主任研究員の研究レポート「新型コロナウイルス政策における証拠に基づく政策決定(EBPM):日本の政府・自治体の主要政策指標は正しい政策判断に資するのか」を掲載しました。(2020/05/26)
https://www.npi.or.jp/research/2020/05/26141810.html

〇高橋主任研究員の研究レポート「新型コロナウイルス感染症が国民の心理に与える影響:感染拡大は自殺リスクを高めているのか」を掲載しました。(2020/04/27)
https://www.npi.or.jp/research/2020/04/27140720.html

〇高橋主任研究員の研究レポート「東京都心通勤と新型コロナウイルス感染拡大:1都7県のデータからの検証」を掲載しました。(2020/04/17)
https://www.npi.or.jp/research/2020/04/17125245.html

〇米中経済研究会レポートNo.20―「中韓経済関係の緊密化と最近の変化」(百本和弘主任研究員)を掲載しました。(2020/04/01)
https://www.npi.or.jp/research/2020/04/01160347.html

〇米中経済研究会レポートNo.19―「中国の「一帯一路」構想における天然ガス調達の現状」(横山昭雄主任研究員)を掲載しました。(2020/04/01)
https://www.npi.or.jp/research/2020/04/01155705.html

〇高橋義明主任研究員による研究レポート「EBPM(証拠に基づく政策⽴案)は⽇本で確⽴するのか:欧⽶の経験も踏まえて」を掲載しました。(2020/03/23)
https://www.npi.or.jp/research/2020/03/23135920.html


研究ノート(http://iips.org/research/kind/note/)
〇帖佐主任研究員の研究ノート「ソマリア沖アデン湾における海賊対処活動の現状と課題」を掲載しました。(2020/06/21)
https://www.npi.or.jp/research/2020/06/22095814.html

〇高橋主任研究員の研究ノート(崎坂香屋子帝京大学准教授との共著)「米国疾病予防管理センター(CDC)による新型コロナウイルスに対する学校管理者等のための手引き」を掲載しました。(2020/03/25)
https://www.npi.or.jp/research/2020/03/25145830.html

〇江藤進主任研究員の研究ノート「「女性起業のエコシステム」 地方からSDGsの可能性」を掲載しました。(2020/03/25)
https://www.npi.or.jp/research/2020/03/25110100.html


コメンタリー(http://iips.org/research/kind/commentary/)
〇コロナウイルス危機に対する日本経済の対応力(2020/04/06、林主任研究員)
https://www.npi.or.jp/research/2020/04/06165721.html

〇"デジタル活用した経済強靭性確保"が挑む、新型コロナウイルスとの戦い(2020/03/27、岩田主任研究員)
https://www.npi.or.jp/research/2020/03/27102427.html


【刊行物のご案内】
 こちらでは、研究所が刊行するNPI Quarterly(季刊)や、Asia-Pacific Review(英文ジャーナル)、研究員の著書・論文・その他の活動について、ご案内致します。

〇NPI Quarterly 第11巻第2号(2020年4月)
https://www.npi.or.jp/publications/2020/04/07150930.html

〇百本主任研究員の寄稿が北陸AJEC『ウォームトピック』に掲載されました。(2020/06/22)
https://www.npi.or.jp/media/2020/06/22095141.html

〇大澤主任研究員が米国ブルッキングス研究所のWebinarに登壇しました。(2020/06/12)
https://www.npi.or.jp/media/2020/06/12090410.html

〇大澤主任研究員の寄稿「デジタル覇権を巡る米中対立の様相」がCISTECジャーナルに掲載されました。(2020/06/08)
https://www.cistec.or.jp/publication/journal.html

〇百本主任研究員の寄稿が国際貿易投資研究所 特集『コロナ禍と中国依存』に掲載されました。(2020/06/01)
https://www.npi.or.jp/media/2020/06/01114400.html

〇大澤主任研究員の寄稿「デジタル・シルクロードの野望と現在地」がVoice6月号に掲載されました。(2020/05/08)
https://www.php.co.jp/magazine/voice/


【お問い合わせ先】
 このメールマガジンは、ご登録頂いた皆様および役職員が名刺を交換させて頂いた方々を中心にお送りしております。
 ご意見を頂戴できる場合は、本メールマガジンの配信用アドレスまでお寄せください。
 なお、原則として返信致しかねますので、ご了承ください。

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TEL 03-5404-6651 / FAX 03-5404-6650
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