2020/11/19
NPIメールマガジン「米中対立をどう見るか」(米中関係研究会)
NPIメールマガジン「米中対立をどう見るか」(米中関係研究会)
■中曽根平和研では今年度「米中関係研究会」を立ち上げ、6月から研究会を開催しています。座長はアジア・中国外交史を専門とする上席研究員・東大大学院総合文化研究科の川島真教授、副座長は同じく上席研究員で現代米国外交・国防政策が専門の法政大学法学部の森聡教授です。
■まず6月28日、米中対立の全貌を捉える目的で、東京大学社会科学研究所現代中国研究拠点との共催ウェビナー「米中対立をどう見るか―アメリカ大統領選挙と経済・技術・安全保障-」を行いました。新型肺炎の感染拡大下で激化する米中対立の動向と今後の焦点を多角的にとらえるものです。報告は川島・森教授から、司会は研究本部長・東大大学院法学部久保文明教授です。
ウェビナーの動画は、https://www.youtube.com/watch?v=NY9qb-0iEG8
でご覧ください。
■主な論点は次の通りです。
<中国>
・新型肺炎対策では、個人情報管理、ビッグデータ活用などの他、伝統的な居民委員会や民兵を活用して都市封鎖を断行するなどし、比較的短期で一応収束させた。
・経済的には大きな打撃を受けたが、自動化・無人化などで新たな活路を見出そうとするなど、目下粛々と復調と雇用問題に取り組んでいる。対外関係は中国との人的往来の回復とともに相手側に香港問題や台湾問題で踏み絵を踏ませる。
・米中対立は、「経済・貿易関税」「テクノロジー知財」から「民主・自由といった価値観の対立」に突入。一方で、国際社会との関係では中国のマスク外交も成功してはおらず、またアメリカの外交も問題が多いために、痛み分け。中国は国内統治、経済回復優先のあまり、国内の宣伝や統治の論理を外側に向けてしまい問題発生。だが、中国からの支援を全ての国が嫌っているわけではない。
・デカップリングは、中国による海底ケーブルやGPS関連衛星など情報中心インフラ全般のデカップリングと、アメリカによるサプライチェーンのデカップリングが進行中。今後は、ファーウェイが半導体の供給を頼るTSMCの動きに注視する必要がある。
・トランプとバイデンのどちらが中国に有利か、中国内で定まりきっていない模様。
<米国>
・中国への反応はアクターが多面的。大統領、官僚機構、連邦議会のアジェンダや環境が刻々と変化している。貿易分野は大統領案件、技術と安全保障は主に安全保障官庁と連邦議会が主導。
・対中経済交渉では、トランプ大統領が対中輸出拡大に関する第1段階合意を注視。中国が足元をみる動きも。トランプには、(1)第一段階合意とそこに絡む支持層を維持するために、中国制裁法案に署名し対中強硬姿勢を見せつつも、実際の適用を遅延するか、(2)第1段階合意を見限って、全米の嫌中感情の高まりに便乗し、中国叩きで大統領選に勝とうとするか、2つの選択肢。
・技術分野では、デカップリングに突き進んでいる。ファーウェイを「締め出す、買わせない、造らせない」で追い込む一方、代替する5Gシステムの構築を推進すべく、「オープンRAN政策連合」を結成する動きなども出てきた。
・安全保障は、新型肺炎による財政出動の影響がいずれ国防予算に影響を及ぼす。2018年の『国家防衛戦略』の目標を満たすのが厳しくなっていく。同盟国に負担を求める動きは一層強くなろう。
・大統領選でバイデン政権になった場合、マルチラテラリズムの復活と、ソフトパワーは幾分か復元されるだろう。リベラルな国際協調を訴えつつも、民主党左派の色合いが出て、汗と血は流さないアプローチとなる可能性。
■本研究会は、中国の動向をにらみつつ世界の各地域における米中関係に追っていきます。次回は「アセアンから見る米中関係」をご報告します。その時々に生じる米中関係に関わる問題も随時発信して行きます。
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