2021/02/25
NPIメールマガジン 「アフリカから見た米中関係:その位相のズレ?」(米中関係研究会)
中曽根平和研究所の「米中関係研究会」(研究リーダー:川島真上席研究員、東京大学大学院綜合文化研究科教授)は、2021年1月19日、「アフリカから見た米中関係:その位相のズレ?」と題して遠藤貢東京大学大学院総合文化研究科教教授のご報告をもとに、議論を行いました。ポイントは以下の通りです。
・アフリカという地域(ここでは主にサハラ以南アフリカ)への中国とアメリカの関与の様態をみた場合、中国の関与の中心は経済・開発で、アメリカの関与は対テロ戦略を中心とした安全保障上の課題にその力点があるといえそうだ。
・まず、中国のアフリカへの関与の戦略的背景は、「一帯一路」構想へのアフリカの取り込みである。狙いは、第一にアフリカ諸国からの政治的な支持獲得、第二に安全保障への関与の強化、第三に巨大な経済市場の実現、第四に大西洋を挟んだ南米との連結性まで見据えた巨大経済圏構想である。安全保障面で興味深いのは、中国はアフリカ連合への軍事支援や国連PKOへの協力を通じてさまざまな施策を打っていくことである。国連PKOの下に中国の人民解放軍が参加して医療サービスや教育面の支援を行う等、ある種の「ソフト・パワー」的な動きも示している。これには、中国国内向けに人民解放軍のイメージ向上を図っている面もある。一方、懸念されるのは「債務の罠外交」である。中国から巨額融資を受けるインフラ建設に関して、採算割れや過剰債務等を理由に事業継続の中断やキャンセルが起きている。今後、中国と各国の間で債務返済に係る具体措置の交渉が行われることになろう。
・アメリカによるアフリカの関与は、経済政策としては、クリントン政権期に構想された「アフリカ成長機会法」を継承している。トランプ政権下では「新アフリカ戦略」の中で「繁栄するアフリカ」プログラムに触れているが、この実施姿勢には疑念が寄せられている。
アメリカの最大の関心は依然として対テロ戦略で、2002年11月にキャンプ・レモニエをジブチに設立、ソマリアのアッシャバーブを標的とした無人偵察機による攻撃や紅海を挟んだ対岸のイエメン情勢など湾岸情勢も視野に収めている。平和維持活動の人材育成にも関与している。
・位相の異なる関与を示してきた米中関係は、近年様々なアクターの関与により重層的に緊張が高まっている。主戦場としての「アフリカの角」、あるいは紅海地域でどのような動きが起こりそうか。2018年に公表された「新アフリカ戦略」の中で、アメリカは中国とのバランス・オブ・パワーの観点からジブチに着目している。中国のジブチへの関与がこの地域におけるアメリカの安全保障上の脅威になるかについては慎重な見方と、アメリカにとって機会を開く可能性があるという議論が存在する。湾岸諸国、トルコを始め、ロシアの関与もあるこの地域の動向に引き続き留意する必要がある。
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遠藤貢教授の発表内容は<https://www.npi.or.jp/research/2021/02/25115841.html>からご覧ください。
米中関係研究会は今後も定期的に研究会を開き、成果を発信していきます。
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