2022/10/12
NPIメールマガジン 海洋安全保障研究委員会による緊急提言「ロシアによるウクライナ侵略戦争の教訓に学ぶ "グレーゾーンにおけるハイブリッド戦に有効に対処し、本格的軍事侵攻から国民を守る13の緊急提言"」
海洋安全保障研究委員会は研究報告「ロシアによるウクライナ侵略戦争の教訓に学ぶ "グレーゾーンにおけるハイブリッド戦に有効に対処し、本格的軍事侵攻から国民を守る13の緊急提言"」を掲載しました。
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1 ロシアの侵略経緯から得られる教訓
ロシアが侵略当初に狙っていたのはハイブリッド戦(グレーゾーンにおいて、それが本格的軍事侵攻に至らないよう意図的に、軍事・非軍事の多様な手法を組み合わせて行われる戦い)であったとの分析に基づき、下記の4点を教訓として導き出した。
(1) ハイブリッド戦 の各種手段を無効化することの重要性
(2) 「武力による威嚇」破綻の帰結とそれを防ぐことの意義
(3) 21世紀においても無視できない本格的軍事侵攻にどう備えるか
(4) 引き続き存在する核による「安定・不安定のパラドックス」
2 東アジアの軍事環境への影響
中国がより巧妙なハイブリッド戦を目指す中、北朝鮮は冒険的であり続け、ロシアは核大国としての影響力行使を模索する。
3 日本の安全保障強化に向けた提言
(1) グレーゾーンにおけるハイブリッド戦への対策強化のための方策
ハイブリッド戦への国家全体としての対策強化のため、以下の施策を提言する。
【提言1】 ハイブリッド戦への対策強化のための総合的な司令塔の確立
ハイブリッドな脅威を探知し対処するため、最新の関連情報を集約して関係係省庁等に指示を発出できる指揮組織及び常時状態把握が可能な指揮センターを整備する。
【提言2】 ハイブリッド脅威分析センターの設立
ハイブリッド脅威に対応するため、官民の研究者による研究、政府機関等への訓練演習環境の提供、政府間の情報交換・集約を行うハイブリッド脅威分析センターを設立し、周辺諸国等との連携を図る。
【提言3】 「認知領域」の戦いに勝つための情報発信の態勢整備
偽情報拡散を用いた世論操作や各種影響工作等に対応するため、国家安全保障局内に対応部署を設置し、組織的な対策をとる態勢を整備する。その際、国際社会への情報の発信の強靭化、独自の歴史観や法解釈による宣伝への対応及びSNS等の分析ツールの整備を考慮する。
【提言4】 サイバー・電磁波・無人機・宇宙等の先端技術分野への対応
サイバー防衛のため、国家としてのアクティブ・サイバー・ディフェンスの位置づけを明確化し、サイバー防衛体制を構築するとともに、日米での役割分担、窓口を明確する。また、自衛隊のサイバー防衛能力の強化のため、民間と連携した教育・研究を行う。
【提言5】 偽装した武装勢力に適切に対処できる体制の整備
国家の関与が不明確なように偽装された武装勢力等を利用して既成事実化を図る手法に対応できるよう、法執行機関と自衛隊の間や日米の連携体制等を整備する。
【提言6】 日米を中心とした東アジアにおける地域的連携・協力の推進
日台間の非軍事面での様々な連携を強化するとともに、米国を核とした東アジアにおける地域的連携・協力体制の中で、ハイブリッド戦に対する強靭性を高める。
(2) 東アジアにおける「武力による威嚇」抑制・抑止のための方策
「武力による威嚇」が武力侵攻に発展するのを防止するため、以下の施策を提言する。
【提言7】 「武力による威嚇」を抑制する国際規範の強化
「武力による威嚇」に当たる行為を許さない国際規範の実効性を高めるため、官民の監視能力の整備及び有効な圧力をかけるための外交的枠組みの構築を行う。
【提言8】 威嚇をエスカレーションさせない適切な抑止態勢の整備
エスカレーションの抑止を考慮した日米共同訓練の柔軟な実施等について予めシミュレーションを実施しておくとともに、事態が進展する中において日米共同対処の基盤となる情勢判断の共通の物差しについて予め協議しておく。
(3) 万一の本格的軍事侵攻から国民を守るために強化すべき方策
本格的軍事侵攻が生起した場合に、国民を確実に守るために、以下の施策を提言する。
【提言9】 マルチドメイン作戦に対応できる総合的な防衛力の整備
提言(1)~(5)で述べたハイブリッド戦対策を、軍事的な侵略に対処する自衛隊の行動に融合させるべく、当該分野の研究開発を含めた総合的な防衛力の整備を実施する。
【提言10】 台湾海峡危機・朝鮮半島危機への対応の基本方針の確立
特に台湾危機対処と日本防衛のための行動が併存した場合の日米共同のあり方を検討するともに、友好国との相互運用性に配慮しつつ、ミサイル・弾薬及び弾薬庫・輸送手段を確保する。
【提言11】 米国による拡大核抑止の信頼性強化
米国による拡大核抑止の信頼性を高め、安定・不安定のパラドックスに対処していくため具体的にどのような方策が有効であるのか、日米間で早急に協議を深める。
【提言12】 日米間の指揮調整機能強化(外交・防衛のみならず政府全体の調整メカニズムへ)
マルチドメインの脅威に対処するため、外交・軍事の枠組みを超え政府全体として日米の安全保障を協議、調整できるメカニズムを構築し、それを実行する指揮統制機能を強化する。
【提言13】 国民保護及び関係国民を含めた幅広い文民保護への配慮
世界で生起している戦争における文民保護の実態を体系的に捉え、より実効的な国民保護の対策を立て、実行する。
詳細はこちらをご覧下さい。
https://www.npi.or.jp/research/2022/09/30104724.html
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