2019/09/27
第10回 東京-ソウル・フォーラム
前列左から、久保NPI研究本部長、鄭求鉉(チョン・グヒョン)SFIA会長、長嶺在韓大使、渡邉NPI顧問、李洪九(イ・ホング)SFIA理事長(元国務総理)、三村NPI副会長、柳津(リュ・ジン)SFIA副会長、藤崎NPI理事長、韓悳洙(ハン・ドクス)元国務総理
中曽根平和研究所(以下、NPI)と韓国のシンクタンクであるソウル国際フォーラム(以下、SFIA)は、2019年9月20日~9月21日に「第10回 東京-ソウル・フォーラム」をソウル市で開催した。
東京-ソウル・フォーラムは、日韓の相互理解促進・日韓関係の友好的発展を目的とし、外交・安保・経済・社会など幅広い分野に関して、日韓の政・財・学の各界を代表する識者が戦略的意見交換を行う場として、2010年より東京とソウルと交互に舞台を移しながら毎年開催されている国際会議である。節目の第10回に当たる今年は「米中競争時代の下での日韓関係」をテーマに行われ、日本からは三村明夫IIPS副会長(日本商工会議所会頭)を団長とする12名の代表団が訪韓した。
冒頭の挨拶で、柳津(リュ・ジン)SFIA副会長(豊山グループ会長&CEO)は最近の日韓関係に憂慮を表明し、両国とも相手国への配慮が必要と述べた。藤崎一郎NPI理事長は、日韓関係改善のための7原則として「相互が敬意を忘れない」「隣国であり、将来の世代では最も親しい友人であるべき」「問題を他国に広げない」「両国の不仲を喜ぶ国があることを忘れない」「懸案はプロフェショナルに協議する」「相手国国民を傷つける発言を慎む」「あらゆる対話・交流を継続する」を挙げた。
セッション1では米中間の戦略的競争と日韓への影響・対応策をテーマに、藤崎NPI理事長をモデレータに川島真NPI上席研究員(東京大学教授)、申範澈(シン・ボムチョル)峨山政策研究院先任研究委員、細谷雄一上席研究員(慶應義塾大学教授)が報告、その後意見交換した。米国次期大統領選の行方にかかわらず、米中対立は長期化することと、それが日韓経済にとって大きなマイナスであり、問題解決のために両国の協調が必要との認識が共有された。半面、両国の対中経済依存度の違いなどにより、日本が「インド太平洋戦略」を志向、韓国が「一帯一路」構想との協調を先行させている点で、両国の政策に差異がみられるとされた。
セッション2では国家間の信頼関係と通商交渉をテーマに、久保文明NPI研究本部長(東京大学教授)をモデレータに、稲葉緑情報セキュリティ大学院大学准教授と崔炳鎰(チェ・ビョンイル)梨花女子大学教授が報告、その後意見交換した。日韓間の信頼関係構築の方法、日韓を含むアジア太平洋地域のFTAのあり方などについて議論した。
リーダーズスピーチは韓悳洙(ハン・ドクス)元国務総理が議長を務めた。三村NPI副会長は、米中の覇権争いの中で日韓両国が置かれている環境認識と、日韓関係のあるべき姿について述べた。李恵民(イ・ヘミン)ソウル大学客員教授は、密接な経済関係の構築が日韓関係の基礎になるとし、日韓FTA締結の必要性を強調した。
セッション3では米中競争時代の朝鮮半島の地政学について、金聖翰(キム・ソンハン)高麗大学教授をモデレータに、朴喆熙(パク・チョルヒ)ソウル大学教授と西野純也NPI上席研究員(慶應義塾大学教授)が報告、その後意見交換した。1965年に締結された日韓請求権協定を尊重すべきという点で意見が一致した一方、最近の日韓関係悪化の背景について意見の相違もあった。
セッション4では少子高齢化の進展と労働市場への影響について、鄭求鉉(チョン・グヒョン)SFIA会長(延世大学名誉教授)をモデレータに、宋枝燕(ソン・ジヨン)ソウル大学副教授、井出智明NPI主任研究員が報告した。少子高齢化が日韓共通の課題であることが確認され、生産年齢人口減少の影響をAIなどでどの程度相殺できるかなどについて議論が行われた。
全体の討議を受け、三村NPI副会長は厳しい日韓関係の中で人的交流の重要性を強調した。鄭求鉉SFIA会長は先の7原則に加えて「過去と未来の分離」「政治と経済の分離」「政府と民間の分離」の3つの分離を提唱した。