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2020/08/07
「2020年代の新たな日本のICT技術戦略」【下・丁々発止編】(中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会)

 中曽根平和研究所では標題につき、日本の情報通信分野の技術開発を長年リードしてきた浅見徹研究委員(株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)代表取締役社長)との意見交換を、以下の通り開催しました。

 【上・プレゼン編】に続き、【下・丁々発止編】の2回に分けて、概要をお届けします。なおスクリプトはこちらをご覧ください。

 

1 議論

 

■主な論点1:5G/Beyond5Gの時代に於ける、日本にとっての国際的チャンス(技術戦略面)

○モバイル・IoT・データ利活用の世界では、技術のみならず法制度を背景にしたエッジコンピューティングと、一方でデータの流動性とをうまく組み合わせたサービスモデルを構築し、さらに国内だけではなく、EUなどと共同歩調を取って共に技術を展開していくのが一番の正攻法ではないか。

〇量子分野においては、量子コンピューティング・量子情報通信・光(フォトニック)ネットワークともに、日本が世界標準を牽引し、研究レベルは高い。しかし問題はそこに終わることなく、それら要素技術を組み合わせて、いかにビジネス規模を育て上げていくかだ。

〇さらに無線技術分野では、いま活用されている周波数帯よりもさらに高いテラヘルツ波技術。非常に高周波が故、電波法の枠外にあるぐらいだが、無線通信以外にも、センシング・診断等に活用できるような可視光線もあり得る。そうした機能性を得るような技術に関しても、研究開発と、法制度見直しによる利活用環境整備も含めて、果敢に攻めていくことが重要。

○その他、過去日本企業が強みとしてきた力量・ノウハウは、いまでも枢要な随所に存在する(データセンタをベースとしたクラウドビジネス、モバイル端末のハード・ソフトにわたる技術力 等々)。そうしたところからの振り返りをベースに、改めてグローバルな強みを創造的に同定し、磨いていくことが必要。

〇知的財産との関係について、現在の主流は、コアな製品技術部分だけが排他特許化・ブラックボックス化していて、そこにつながるための接続仕様などはすべてオープン・共有化・標準化して、様々な装置・サービスに互換性を持って組み込んでいけるようする、といういわゆる「オープン&クローズ戦略」。これを踏まえた戦略が必須。

 

■主な論点2:5G/Beyond5Gの時代に於ける、日本にとっての国際的チャンス(体制・人財戦略面)

○国際的な連携について。日米欧に関しては、昔から技術開発連携に関して長い歴史がある。特に欧州の人々とはお互い標準化の動きで手を携えてきた経緯もある。こうしたところを積極的に生かしていくべき。

〇国内では、政治のリーダーシップとともに、省庁間横断にて国家レベルで戦える体制としないと、新たなイノベーション・新たな社会的価値創造は実現できない。

〇また、政策の事後評価は必須。2001年のe-Japanについても未だ以って十分な振り返りは行われていないと認識。電子政府・電子自治体への取り組み、これらと個人情報保護との関係性など、検討に参加された方を含めて、振り返りをきちっと残していく形にならないと、日本が、e-governmentで世界的にいい位置には行くことは出来ないだろう

○米国DARPA(国防高等研究計画局)などで見られるように、プロジェクトマネジャーが戦略的な観点からプロジェクトを回していけるような仕組み・人材を得るには、日本のICT技術開発においても、異なる分野・異なるバックグラウンドを持つ人々どうしの交流を活発にしていく必要あり。人材の同一箇所・同一役割での長期固定化は大きな敵。

〇イノベーションのカギとなる、2つの「そうぞう」のうち、想像(Imagination)の取り組みは、官だけでは難しい。1つのアイディアは、想像力に長けた人材が自ら気づき、学業をドロップオフしてでもベンチャーを立ち上げるような機運を醸成すること。もう1つのアイディアは、実際に顧客を有する事業部門と、研究開発部門の双方を持つような、ICT大手企業への期待。いずれをとっても、「お客様の動きを理解して、そのうえで研究開発シーズを評価する」というプロセスが重要であり、ここを経ないと、本当の意味でのイノベーションは生じ難い

 

■主な論点3:国際的チャンスを掴む礎ともなる、ICT技術の国内社会実装向上に向けて

○簡易な技術であっても先端的な技術であっても、企業や官公庁がふだんの業務で活用できるインフラとして実装しておくことが必要。(緊急時にいざ活用、といってもうまく機能しない)

〇また、5G/Beyond 5Gの時代は、政策と技術の両面が揃ってはじめて、新しいICT技術が社会実装される時代だ。従って、社会・行政システムと一体で、ICTシステムの設計を改めて見つめなおしていく営みも重要。

○日本のシステム開発の多くは、顧客に特化した「テーラーメイド」な作りとなっている。欧米亜のように、「レディメイド」の標準部品を組み合わせて活用できるような、汎用的なものにしていくことが、普遍性・応用性・柔軟性を高めるうえで必須。

〇「ソフトウェアツールの標準化」「ワークフローの標準化」「ジョブ型雇用の定義標準化」は、本来、目下の「働き方改革」とセットで議論されるべき(欧米ではこれが当然の前提)。この標準化が進まないと、労働者の流動性も向上しないし、ワークライフバランスの選択肢・多様化も広がらない。

〇いわゆるデジタルデバイドについては、以下の2つの視点が必要。①年齢的な観点からは、スマホを使えるシニアが増えている。10年経てばほとんどのシニアが使えるようになっているだろう。斯様な時間軸の前提を踏まえたデジタル技術の現実的活用戦略が必要。②地域的な観点からは、クラウドの拡がりをはじめとした技術の標準化によって、場所を問わず活用できるツール・サービスが着実に増えている、これらを最大限活用できるよう、地域データの着実な収集によるビッグデータ化が目下の課題。

 

2 日時等:令和2年7月27日(月)15:00-17:25 (ウェブ会議により実施) 

3 参加者: 中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会 研究委員、および中曽根平和研究所関係者 ほか

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