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産業・通商

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2021/09/16
前田主任研究員による研究ノート 「EU車載電池産業をめぐるビジネス環境について」を掲載しました。

〇欧州の電気自動車(EV)需要は2020年に急成長を遂げた。欧州連合(EU)が脱炭素社会の実現を目指す中、更なる市場拡大が期待されている。しかし、その基幹部品となる車載電池については中国・韓国企業による寡占化が欧州市場でも顕著だ。先行投資により、EU域内に生産拠点を展開する韓国系3社の他、ドイツでのプラント建設計画を明らかにしている寧徳時代新能源科技(CATL)など中国系企業の存在感が際立つ。

〇 欧州の主要産業のひとつである自動車分野の基幹部品供給が外国資本に過度に依存する状況について、EUの執行機関である欧州委員会は懸念を示す。欧州委員会は「電池供給の外国依存はEUにとってのリスク」と見ており、"経済安全保障"の観点から、その是正を目指す施策を相次いで打ち出している。

〇欧州委員会のマレシュ・シェフチョビチ副委員長はEU域内を中心とする電池関連産業の"合従連衡"を提唱。EU競争政策に抵触しない範囲での産業連携プラットフォームとして「欧州バッテリー同盟(EBA)」を2017年10月に立ち上げた。EBAはEU域内の電池産業の官民連携基盤として、イノベーション創造など広範な役割が期待されている。なお、欧州委員会はEBAのような枠組みを「産業同盟」と呼び、戦略産業分野で同様のプラットフォーム組成を急ぐが、EBAはその"嚆矢"と位置付けられる。

〇また、欧州委員会は欧州投資銀行(EIB)とも連携し、電池産業に関わるスタートアップ企業支援も進めている。その成功事例がスウェーデンに本社を置くスタートアップ企業・ノースボルト(2016年創業)である。同社は電池生産については新興企業だったが、設立当初からEUの推進する「循環型経済」に着目。その思想を事業化する戦略を掲げることで、投資家から注目を集め、短期間に巨額資金調達に成功した。

〇 欧州委員会はEUの電池産業の競争力強化のための"処方箋"を明らかにしているが、この中で特に注目されるのが、「EU電池規則の整備」と、「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)推進」だ。前者は電池の再生材含有量の表示義務、当該含有量の最低基準導入などを通じて、電池リサイクルを推進する狙いがある。後者についてはEU域内の複数加盟国が関与する重要投資案件に対する国家補助規制を緩和する姿勢だ。

〇 このEBAを始めとする欧州の電池産業強化の取り組みは、日系企業ビジネスとも無関係ではない。EBAやIPCEIのプロジェクト参画企業として認定されている日系企業が既に存在する他、ノースボルトとのビジネスを模索する日系企業・機関も現れている。電池ビジネスの"ホットスポット"として期待される欧州に対する関心が高まる。

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