2022/01/27
米中関係研究会・コメンタリーNo.12「海から陸へ? 通信インフラをめぐる地政学」(川口貴久・東京海上ディーアール株式会社主席研究員)を掲載しました。
「21世紀の石油」たるデータをめぐる競争は、今日の米中対立の最前線の一つである。膨大なデータとそれらにアクセスする能力は産業・競争力の源泉であり、軍事・インテリジェンス面での優位性をもたらす。
国家はどのようにデータにアクセスするのか。サイバー攻撃は手法の一つだが、大量の情報・データへのアクセスという点では効率的ではない。情報・データのバルク収集という点では、政府が強制力を以って民間企業が保有するデータにアクセスすること、いわゆる「ガバメントアクセス」は有効な手段であろう。何よりも、データセンターや海底ケーブル陸揚げ拠点といった基幹となる通信インフラを政府・自国企業の管轄権下・影響下におき、これらに物理的にアクセスする能力が重要となる。
本稿では、ハードな通信インフラをめぐる米中対立の一端、中国によるユーラシア大陸内部での通信インフラ建設を論じる。通信インフラの建設・運用をめぐる対立といえば、多くの人が想起するのは海底ケーブルだろう。つまり、「海洋国家」たる米国は海底ケーブルの敷設計画に影響力を行使し、中国資本を排除し、通信インフラをめぐる競争で優位に立つ、といったストーリーだ。しかし同時に、中国もまた海と陸での通信インフラ建設を通じて、影響力を行使しようとしている。米国や同盟国が影響力行使しにくいユーラシア大陸内部では、中国がハードな通信インフラの整備を進める。