2021/11/25
米中関係研究会・コメンタリーNo.10 「ベネズエラの政治経済危機に対する米国と中国の対応 」(アジア経済研究所・坂口安紀主任調査研究員)を掲載しました。
南米ベネズエラで1999年に誕生した急進左派のウーゴ・チャベス政権と彼の死去(2013年)後を継いだニコラス・マドゥロ政権は、強烈な反米主義と「21世紀の社会主義」を標榜し、米国をはじめEU、カナダ、コロンビアなどの南米諸国との対立を深める一方、キューバ、中国、ロシア、イラン、ベラルーシ、北朝鮮などと関係を深めてきた。
チャベス・マドゥロ両政権と米国が対立するのは、強烈な反米主義や外資企業の国有化に加えて、権威主義化、人権侵害、経済破綻とそれがもたらす人道的危機、政権による国際テロ組織への支援、麻薬取引やマネーロンダリングなどの国際犯罪への関与などが原因である。チャベス政権初期から司法を含めてすべての国家権力をチャベス派が支配し、大統領に権力を集中させ、選挙の競争性は完全に失われた。反政府派政治家や市民、メディアへの弾圧、拷問など国家による人権侵害も広がった。
2019年以降は、反政府派の主要政党・リーダーを排除した選挙で「再選された」とするマドゥロが「二期目に就任した」が、反政府派および欧米日など50カ国以上がそれを承認せず、憲法規定に基づき反政府派のフアン・グアイド国会議長が暫定大統領に就いた。どちらを正統な大統領として承認するかで国際社会が二分している。以下では、米国と中国がチャベス、マドゥロ両政権に対してどのような対応をとってきたのかについて概説する。