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外交・安全保障

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2021/12/09
帖佐主任研究員による研究ノート「「クイーンエリザベス」空母打撃群のインド太平洋地域派遣:その戦略的背景と我が国の対応」を掲載しました。

 「クイーンエリザベス」空母打撃群(CSG21)のインド太平洋地域派遣は、対中包囲網への英国の参加といった期待や日英同盟という歴史的事実のアナロジーだけで論じるのではなく、様々な角度からその戦略的背景を理解することが重要である。

 CSG21の派遣に際して、ジョンソン首相やウォレス国防相は中国に対し、当該地域における安全保障上の課題への英国のコミットメントを明言している。また第一海軍卿ラダキン大将(当時)やCSG21指揮官ムーアハウス准将は、同盟国との関係強化、攻撃的・冒険的な行動をとる国家の抑止、英国の経済的繁栄の促進といった任務をCSG21が担っているとしている。

現在の英国の戦略を概観すると、CSG21派遣は当該地域で軍事的な威圧を行うといった単純な軍事オペレーションというより、①平時における戦略的メッセージとしての対中牽制・抑止、②米国等の同盟国との相互運用性・代替可能性の向上や友好国との関係強化、③インド太平洋地域における経済的野心の実現であると理解できる。

また、英国が実施した様々なインド太平洋地域関連の政策全体の中においても、軍事に関する政策はCSG21が一手に引き受けているとともに、外交・情報・軍事・経済分野においてCSG21の派遣が非常に効果的な抑止措置であったことが分かる。

 以上の分析から、CSG21派遣の戦略的背景とは、政治・外交的影響力や経済的利益を取り戻す場としてインド太平洋地域を選んだ英国が、世界で積極的かつ自信に満ちた役割を果たしていくため、同盟国や友好国との軍事・外交・経済上の連携を深めつつ、その障害となりえる中国を抑止・牽制すべく、最も効果的な道具としてCSG等の軍事力を用いていることであるとの結論を得ることができる。

我が国として英国のインド太平洋地域への積極的な関与を強力にサポートするためには、ホストネーションサポートと防衛交流の促進に加え、英軍専用の入港岸壁の設定や常設の陸上司令部の誘致を検討することを提言する。

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