2022/07/21
河西研究助手によるコメンタリー「「特別軍事作戦」初期におけるロシアの対ウクライナ・インテリジェンス」を掲載しました。
2022年2月24日ロシアのウクライナに対する「特別軍事作戦」が開始されてから四カ月以上が経過した。各種報道では連日ロシアの外交・安全保障に関する専門家による戦況の分析・予測がなされているが、未だ戦争の終息の見通しはついていない。そうしたなか、開戦後間もない3月11日、ウラジーミル・プーチン大統領の強力な権力基盤であるFSB(連邦保安庁)において対外情報収集・分析を行う第5局のトップが突如として解任、自宅軟禁を経て投獄、更に約一か月後の4月13日、やはり第5局に勤務する職員約150名が「追放」されるという衝撃的なニュースが飛び込んできた。これら一連の出来事は、プーチン大統領が自身の築き上げた強大な情報機関に大鉈を振るうという意味で異例の事態であったが、その後続報がほとんどなく、また時々刻々と変化する戦況報道の中に埋没してしまった感がある。
そこで本稿では、限られた公開情報やロシア人研究者の論考などを元に、以下の点について改めて考察する。ウクライナの国力、軍事力、継戦能力や国内情勢について情報収集・分析を行ったのは何処のセクションで、どの様なインテリジェンスが開戦以前にもたらされていたか。開戦に先立ってクレムリンが行った情勢判断はどのようなものであったか。果たしてインテリジェンスは生かされたのか。