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外交・安全保障

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2022/11/16
森聡上席研究員(慶應義塾大学教授)によるコメンタリー「バイデン政権の国家安全保障戦略」を掲載しました。

 バイデン政権は、2022年10月12日に国家安全保障戦略を発出した。これまで歴代政権の多くは、政権発足の年あるいは翌年の早い段階で国家安全保障戦略を発出してきたが、本年2月にロシアがウクライナに侵攻したことを受けて、戦略の草案を改訂し、発出のタイミングが遅れたといわれる。国家安全保障の目的・方法・手段のうち、「目的」は政権が代わってもほぼ変わらず、アメリカ人の安全、経済的な繁栄と機会、アメリカの生活様式の根幹にある民主的価値が保障される「自由で開かれた繁栄する安全な世界」を作り出すことにある。また、「手段」については、国家安全保障戦略で新たな政策イニシアティヴを打ち出すことは稀であり、既存の政策を整理・記述している場合がほとんどである。今回のものもその例に漏れない。つまり国家安全保障戦略は、アメリカの国家安全保障の「方法」を体系化する知的枠組みであり、そこには(トランプ政権を例外として)大統領と政権の世界観や価値観が投影される。

 今般のバイデン政権の国家安全保障戦略で目新しいテーマが登場したわけではない。民主党の対外戦略等によくある、二つの(時として相反する)要請を折衷させようとするアプローチがみられるほか、これまでの批判を踏まえた模範答案的な論述が散りばめられている。国家安全保障戦略が戦略的コミュニケーションのツールであることに鑑みれば、当然の事といえるが、戦略というよりも体系化されたレトリックという印象を強く残す。以下、5つのポイントを取り上げてみたい。

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