2025/07/03
日米同盟研究会コメンタリーNo.71「G7カナナスキス・サミット首脳声明に見る 「国境を越えた抑圧」対策と議長国カナダの戦略」(桒原響子・日本国際問題研究所研究員、Macdonald-Laurier Institute フェロー)を掲載しました。
カナダを議長国とするG7サミットが、現地時間6月16〜17日にカナダ・カナナスキスで開催された。今回は、ロシアによるウクライナ侵攻や関税問題をめぐって、アメリカと他の参加国との間で合意が得られず、首脳宣言は発出されなかった。一方で、7カ国の意見を反映する形で、イスラエル・イラン情勢に加え、重要鉱物、AI、量子技術、国境を越えた抑圧(Transnational Repression:TNR)、山火事、移民対策の計7つのテーマについて、それぞれ個別の首脳声明が発表された。
なかでも注目されるのが、「国境を越えた抑圧に関するG7首脳声明」である。国境を越えた抑圧はTNRとも呼ばれ、外国政府またはその代理勢力が、亡命者、活動家、反体制派などを対象に、監視・脅迫・嫌がらせ・家族への圧力などの手段を用いて行う広範な行為であり、外国からの干渉(Foreign Interference: FI)の一形態と位置づけられる。日本国内で十分に認知されていない概念だが、近年、関係国の間で関心が高まっている。