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2019/07/12
「情報通信技術と国際的問題」研究会レポートNo.2ー「国際標準化の「変貌」と日本に必要な「対応」」を掲載しました。

国際標準化の「変貌」と日本に必要な「対応」 
~「ルール設定主導」の流れに対する日本の心理的「強み弱み」を踏まえ~

(「情報通信技術と国際的問題」研究会レポートNo.2)

森 直子 (機械振興協会経済研究所 研究副主幹)

稲葉 緑 (情報セキュリティ大学院大学  准教授)

岩田 祐一 (中曽根平和研究所  主任研究員)

レポート本文はこちらからダウンロードできます。

(要旨) 

■国際技術標準の分野では、「デファクト標準の形成を、いかに達成するか」から、「標準プラットフォーム形成とオープンネットワーク型経営の重要性」を経て、いまや「IoT(モノがつながるインターネット)など通信ネットワークでつながるために国際標準設定にいかに参画するか」という局面に移ってきている。

■こうした「国際標準の能動的活用」を始めた元祖は、実は欧州連合(EU)であり、そのきっかけは1995年のWTO(世界貿易機構)の成立である。当初は「円滑な貿易のために重視された」国際標準も、のちに複数国際標準同士の競争が発生していくなかで、さらに、技術のみならずその活用の概念ならびにシステム全体までを、体系的・包括的に「標準化」する形が主流となるなかで、今や「市場競争力をサポートするための」国際標準という位置づけへと変化した。WTOや国際標準化機関、WIPOなどでは、こうした「競争領域」と「協調領域」の両方の性質を併せ持つ国際標準に対して、目下のところバランスよく扱いかねているのが実情である。

■さらに中国においては現在、自ら国際標準を主導するスタンスに立っており、欧州、特にドイツからの学びを得て、欧州、米国等と肩を並べるような動きとなりつつある。中国の強みは「国内での国際標準化への強力な前捌き」「国際協力事業との一体展開」が出来るところであり、階層化された国内標準化体系や「中国製造2025」等を活用し、この動きを更に加速させつつある。

■このような「ルール設定主導による国際間競争の有利な展開」を目指す目下の「国際標準化」の世界的流れに対して、日本としては以下の3つが課題といえる。1)経営者的視点ある第一線の企業技術者の参画の弱さ 2)政府の一元的(連携的)支援体制への強化の余地 3)国際標準と、製品の国際的普及・実装との戦略的連携の弱さ

■これら日本の課題は、(理想論ではなく)プラクティカルに解決していく必要がある。特に日本人のリスク等に対する心理的態度の特徴である以下4点: A)リスクコントロールへの意識・コスト感・ルール形成感の弱さ B)周囲との関係維持「相互協調」重視 C)他者との信頼関係を新たに構築することの不得手さ D)変化の許容が比較的短期間では困難 がもたらす強みと弱みとを直視しつつ、特に上記3課題に共通する「解決必要性に対する意識の弱さ」そして「協調を強めるべき領域・関係性であるという意識の弱さ」を、「意識して」変えていくことが重要。

■まずは「課題」「取り組み(進捗状況)」の「見える化」を行いつつ、「Connected Industries」政策のキーワードである「協調領域」にしっかり「国際標準化」を組み込んだ上で、国内外の誰をどう巻き込むかを積極的に示し、官のリードのもと産学が連携して取り組むことが急務。

以上

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