2020/07/13
「デジタルプラットフォーマーと金融」【中・議論編1】(中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会)
中曽根平和研究所では標題につき、中国金融ビジネスに長年携わってきた、岡野寿彦研究委員(NTTデータ経営研究所シニアスペシャリスト)および岩田祐一研究委員(中曽根平和研究所主任研究員)との意見交換を、以下の通り開催しました。
【上・プレゼン編】に続き、【中・議論編1】【下・議論編2】の3回に分けて、概要をお届けします。なおスクリプトはこちらをご覧ください。
1 議論
■主な論点1:「デジタル」において、中国は脅威か協調か?
○中国企業が作っていくようなデジタルインフラに乗っかるのか、それともそこで競争するのかといったことを判断しなければならない状況が、企業レベルではだんだん具体化してくる。
○日本企業あるいは日本という国にとってチャンスはある。特に、人の命にもかかわるようなミッションクリティカルな業務の重要性が高まってきたときに、中国に欠けているのはここの業務知識だ。また安定した企業継続を支える、組織中間層の育成も課題。
○日本企業は「現場力」の強みを生かして、製造業やサービス業における業務プロセスをしっかり作り上げてきていて、実はそれが、中国が日本に対して欲しいところ。一方「ビジネス・サービスのデジタル化の実験」として、中国は日本企業にとって魅力的な環境が整う。
○こうしたときに大切なのは、互恵関係と、得るもの/失うものを共に意識・継続評価するなかでの、中国に対する「パワーのマネジメント」。
■主な論点2:「デジタル」における、中国の"地政学的な"戦略と、そこへの対応
○中国の影響力の拡大は、特に東南アジアではかなり広まっていく。
○また中国と欧州を結ぶ海底ケーブルネットワークは、一帯一路戦略と符合しているが、それが使われるかどうか(データが流れるかどうか)は、各陸揚地における有力電気通信事業者のビジネス判断による。
○中国の対外的動きをみるときには、外から見て"脅威"と思えるような"強い"中国と、経済発展や雇用・社会秩序を維持して国民の支持を得て「小康社会」の実現を目指す"デリケートな"中国の両面があって、往々にしてそうした内政上のバランス調整が背景にある点に留意が必要。
■主な論点3:「デジタル」で、米中に挟まれた各国の対応
○欧州は、固有のデジタルプラットフォームは弱く、電気通信事業者も研究機能を縮小させている。一方で、EUや国主導でいろいろやっているところ、またドイツをはじめ産学連携の動きが盛ん。そうした、EUや各国政府が、民間もしくは学界とどううまく連携しながら立ち位置を作っていくか、が概ね欧州の方向性。
■主な論点4:「デジタルプラットフォーマー(Big Tech)」と「金融規制」の関係性
○デジタルプラットフォーマーは、各国ごとの金融規制への抵触度合いを踏まえたサービス制度設計があるとみている。(中国のデジタルプラットフォーマーについては、特にこの点が本格進出上のハードルになり得る)
○中国に於いては、実名制の透徹により、デジタルプラットフォーマーを通じて、情報やおカネの流れをコントロールする動きを強めている。また政府・人民銀行から見た場合の金融の安定(為替・破綻回避・資本流出防止 等)は重要なイシュー。
以下【下・議論編2】に続く
2 日時等:令和2年6月30日(火)10:00-12:10 (ウェブ会議により実施)
3 参加者: 中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会 研究委員、および中曽根平和研究所関係者