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2020/11/16
「ICT(情報通信技術)の国際コラボレーションのかたち」【上・プレゼン編】(中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会)

 中曽根平和研究所では標題につき、大道英城研究委員(株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)常務取締役)ならびに、松下奈美子研究委員(名古屋産業大学現代ビジネス学部准教授)との意見交換を、以下の通り開催しました。

 【上・プレゼン編】【下・丁々発止編】の2回に分けて、概要をお届けします。なおスクリプトはこちら、大道委員のプレゼンテーション資料はこちら、松下委員のプレゼンテーション資料はこちらをご覧ください。

 

1 プレゼンテーション「官民連携によるICT分野の海外展開について- JICTの取組みを中心として--」(大道委員)

 

■ICT分野の海外展開における官民連携の高まりの背景、および重要強化ポイント

現在、日本におけるICT分野の海外展開政策は、総務省がこの5月に策定・公表した「海外展開行動計画2020」がそのベースだ。この冒頭では「日本と世界を取り巻く環境の変化」として5点が示され、これが概ね、官民連携の高まりの背景といえるものだ( [ ]は補足):
(1)世界経済における日本の地位低下
(2)世界のインフラ需要の増加
(3)SDGs達成を目指す動きの加速
(4)国際環境の変化[先進国・途上国共に拡がるインターネット環境とデジタル・ディバイド]
(5)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響[デジタル利活用の重要性増大]。
 

この行動計画での重要強化ポイントはいくつかあるが、なかでも新たに示された「外交政策と整合的な"デジタル国際戦略"の推進」は特に重要だ。具体的には、2019年のG20大阪サミットで日本が示した「信頼性のある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust : DFFT)」を支える、5G(携帯第五世代)を起点とした「ローカル5G」「IoT」等の産業基盤整備の海外展開だ。
このほか、支援対象国および競合国の動向を含む情報収集を行い「インフラの持つ外交上・地政学上の含意に留意」していくこと、「世界標準を見据えた国際機関等での合意形成を行いながら世界最先端の技術開発を実施」していくこと、更にこれらを実施していくうえで「資金・事業への継続的コミットメント、および必要なリスクマネー供給」を行っていくこと等が肝要になる。

■ICT分野の海外展開におけるJICTの存在

ICT分野の海外展開において、このようなリスクマネーの供給等の観点から、2015年に機構法に基づき、日本政府および民間企業の共同出資により設立された官民ファンドがJICTであり、政府系としてはICT事業を専門とする国内唯一のファンドだ。
政策面における具体的活動のバックボーンは先の「海外展開行動計画2020」に裏付けられるものであり、実際に日本企業のICT分野での海外展開を支援するにあたっては、日本政府(総務省・在外公館等)との連携が重要だ。
投資領域はICTインフラ、及びICTインフラを利活用したICTサービス全般を幅広くカバーする。これまでの支援実績としては、欧州電子政府サービス事業者に対する国内民間企業との共同M&A、また東南アジア-インドを結ぶ新たな光海底ケーブル事業への支援などがある。
ICT分野における近年の世界潮流・企業戦略の重点も大きく変化している。なかでも「投資対象のサービス化・投資規模の巨大化」そして「不透明な国際情勢」への対応は、喫緊の課題だ。

 

 

2 プレゼンテーション「日本の外国人IT 技術者受け入れの変遷 -2000 年代の移動に着目して-」(松下委員)

 

■日本の外国人IT 技術者受け入れの過去30年

デジタル化に伴う、今後のICT(情報通信分野)分野の国際協力可能性を検討するにあたっては、過去の国際人材交流を振り返ることが大切な要素の1つだ。
日本の外国人ICT技術者受け入れの増加は、1989年の入国管理法改正が1つの大きなきっかけであった。1990年代は、北米出身者が多くを占めたものの、2000年代にはアジア出身者にシフトした。2008-09年の世界金融危機をきっかけに、いったんは全体的な減少に転じたものの、その後再び増加基調となっている。

 

■2000年代前半のアジアからのIT高度人材受け入れの振り返り

特に2000年代前半に、日本でICT分野の優秀な外国人人材を受け入れるべく、検討が進んだ。この背景には、インターネットの広範な普及にあわせた電子政府の早期実現・電子商取引の普及等からなる、日本政府の「IT基本戦略」の存在がある。
当時の国際交流は主にアジアをターゲットとしており、施策としては「ITスキルの標準化(資格制度の相互認証、共通統一試験)」などがあった。前述の政策的要因に加え、賃金の相対格差・韓国での失業率上昇などがこの動きを後押しし、また韓国・中国等との二国間覚書に加え、韓国政府の海外就労支援政策も手伝い、結果、特に中韓からの有スキル者渡航が増加した。

ただ結果として、IT基本戦略で謳われた「世界最先端のIT国家を目指すための専門人材」が来日したとまでは明確に言えない。むしろ、国内外景気の影響を大きく受けた、必要人員を確保するための需要調整弁だった可能性も有る。

 

以下【下・丁々発止編】に続く

 

3 日時等:令和2年10月29日(木)12:45-15:15 (ウェブ会議により実施) 

4 参加者: 中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会 研究委員、および中曽根平和研究所関係者 ほか

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