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外交・安全保障

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2022/01/06
横山主任研究員による研究ノート「これからの中国との経済関係(1) -高まる安全保障上のリスク- 」を掲載しました。

1. 米中対立は、トランプ前政権の貿易紛争で顕在化したが、バイデン現政権になっても、多方面にわたり進展・深刻化している。論点は知的財産権・技術の剽窃問題に加えて、台湾や南シナ海など境界付近での対立のほか、香港・新疆ウイグルでの人権をめぐる対立も進み、当初の関税の賦課から、貿易・金融・投資など多角的な制裁合戦が進んでいる。


2. 安全保障上の例外を除き、貿易はもちろん、あらゆる交流が自由であるべきというのが我が国と企業・個人の基本的な立場である。しかし、米中対立は、貿易・金融・投資など経済全般に制度的な制約を課してきたが、今や国家間の課題だけでなく、少数民族などの「人権侵害」を理由とした制裁と対抗措置が米中以外の国も加わってエスカレートしてきている。


3. 今や、米国法に従って、「米国の国家安全保障...上の利益に反する」として中国顧客との取引を取り止めれば、中国の公民・組織に対する「反差別的制限措置」にあたり中国法では違法になるという、「あちらを立てればこちらが立たない」対立になってきた。


4.「人権侵害」者との取引は、法令レベルで制裁の対象になるのと同時に、対応次第では消費者・国民の企業選別を引き起こしかねない。新疆ウイグルでの問題は、一方で各国企業による同地域産の綿製品などの不買につながり、他方で中国市場での不買企業製品の不買運動を招いている。わが国の企業・個人は、今後のビジネスにおいて、いっそう難問に直面することになる。


5.対立の一方で、2018年末の(CP)TPPの発効につづき、昨11月までに寄託済みの10ヵ国について1月よりRCEPが発効した。RCEPは、わが国が主要貿易相手国である中国や韓国と初めて結ぶ自由貿易協定となり、その経済効果は強く期待される。しかし同時に、特に、研究開発での競争力が向上し、又、一帯一路など巨大な政府主導のプロジェクトを講じている中国との競争は、自由化の進捗にともない非常に厳しいものとなろう。


6.本稿では、二部に分けて、このような安全保障上の対立が広範な争点にわたり、多数の制裁合戦を招いている現状を確認し、また経済連携協定がもたらす期待と不安を整理することで、今後の企業活動の一助といたしたい。

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